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甲府・城福浩監督インタビュー「広島でも、浦和でも、湘南でもない。甲府の3バックがある」

2014/1/9 19:08 0



甲府は2012年、圧倒的な強さでJ1昇格を決め、その中で24戦無敗という記録も打ち立てた。迎えた13年、J1を戦うシーズン。前年の好調さを継続するかのように序盤は7戦無敗もあったが、初夏から8連敗。その中で指揮官はどう舵を切り、残留を成し遂げたのか。自身の決断、戦術面での試行錯誤と選手の成長、そして迎える14年への展望を聞く。

序盤の7戦無敗と8連敗

──城福監督は甲府の指揮を執って、2014年で3年目になります。市民クラブ、プロビンチアの監督という立場に、今までのキャリアとの違いはありますか?

城福 基本的にほとんど一緒です。僕がピッチの上でやることは一緒ですから。(08年に)僕がFC東京の監督に就任したときは、順位的にあまり良くなくて(07年12位)、日本代表にもコンちゃん(今野泰幸/現・G大阪)がボランチのサブで呼ばれていただけでした。何人かは代表に送り込みたい、個人の成長=チームの成長ということで、それを目指しました。

 最終的に長友(佑都/現・インテル)とコンちゃんが代表に入り、南アフリカW杯30人のラージグループには5人呼ばれることになりました。いまも選手の成長を促して、それをチームの成長につなげていく作業をするということは変わりません。ただ、その証は代表に選ばれることではなく、ビッグクラブに獲られていくということかもしれません。まったく同じ目標でやっているけれど、表れる結果が違うことは、市民クラブの仕事をやる上での違いと言えます。

 でも、大きいクラブは大きいクラブで、シーズンの途中で選手が海外に行くこともあります(※FC東京時代、09年にはカボレがカタールのアル・アラビへ、10年には長友がイタリア・チェゼーナへ移籍)。計画を練りながら、それを続けられないアクシデントもある中で、チームとして成長していこうというのは、どこのクラブも同じだと思います。

――甲府には風通しの良さがあって、城福監督と海野一幸会長、佐久間悟GMの密なコミュニケーションは強みだと思います。

城福 意見のぶつかり合いはありますよ。おのおのの立場でヴァンフォーレ甲府というクラブを思って、意見を言い合う空気はあります。でも、言った後はおのおののタスクに責任を持つという切り分けができている。僕が来たときにはそういう空気になっていましたが、それは強みだと思います。組織上のことでストレスを抱える、理不尽さを覚えるということはなく、お金がないという悩みに“特化”できますね。

──13年を振り返ると、第4節から7戦負けなしでしたが、あの時期に結果が出ていた理由は何でしょう?

城福 (12年のJ2優勝に貢献した)ダヴィ(現・鹿島)とフェルナンジーニョ(現・CAリネンセ/ブラジル)がいなくなったということはありました。だから『FWをどうしよう、新外国籍選手は戦力になるんだろうか?』という葛藤を持ちつつも、守備は12年の24戦無敗を引き継いでシーズンに入れたと思います。

 チームとしてどうやるかが明確だったので、(新加入の)バウル(土屋征夫)やアオ(青山直晃)もわりと違和感なく入れたと思います。

 ただ、ほか(のチーム)がまだチームになっていなかったという印象のほうが強いですね。ACLを戦いながらとか、けが人がいたり新しい選手が入ってその選手がフィットし切れなかったり。多くのチームが潤沢な選手層の中で、最大値を見極めている最中というのが序盤戦でした。相手が模索している途中であればそうそう簡単にはやられないというのが、前半戦の図式だったと思います。

――監督としては、そのまま行けるという手ごたえがありましたか? それとも危機感が残っていましたか?

城福 まったく楽観視していませんでした。逆に開幕(vs仙台・1△1)では、『こんなに調子の上がらない仙台に勝っておかないと後が怖いな』とか、そういう思いしかなかったです。第3節の名古屋戦(1●0)もそうです。相手の調子がまったく上がっていない、最大値からしたらまだ5割6割の間に、われわれが勝ち点3を取っておかないと…という思いが強かったです。

――7戦無敗から一転、8連敗という時期に入ります。その要因は何だったと思いますか?

城福 まず一つは、それくらいになってくると対戦相手が自分たちを研究してくるわけです。『甲府はこういうプレーが得意なのか』とか、『甲府のチャンスメークはここからだな』という部分で、対策をされ始めていました。ウチはそんなに武器がいっぱいあるわけではなく、攻撃に関しては『ここからのパスとここからのドリブルを抑えればいい』という人の当て方をやられたときに『だったらこちら側から』というふうにはなかなかならない。

 もう一つ、われわれは登録選手の平均年齢がJ1で一番上なんです。夏場に差し掛かって、暑くなりかけてきたことも、大きな要因だと思います。

 一番大事なことは、相手にやらせないこと。オープンなゲームになったら、相手のほうに個のタレントがある。いかにコンパクトにして、タレントが能力を発揮する時間とスペースをつぶすかというのは、春先であればまだできていたんです。しかし暑くなると、60分くらいまではやれるけれど、それ以降は相手と同じくらいの緩さになってしまう。同じ緩さになると、相手のほうが個は上なので抑え切れない。

 自分たちが10割から8割に落ちて『8割vs8割』になったときは、個の差や一振りの精度の違いが出てくる。60分までは悪くなかったけれど…というゲームの落とし方が出ていたと思います。

 あれだけ長い間結果が出ないというのは、何らかの大きな原因があるということです。レッズ戦(7月6日、第14節・0●1)や東京戦(7月17日、第17節・ 1●4)はそれが如実に出たと思います。

――夏場の減速は予想されていたんですか?

城福 予測していましたね。いかにコンパクトにやり続けるかは、いつも強く意識していましたが、年齢的にもベテランが多いし、連戦になってくる、暑いといったことが重なってくる。これさえやればうまくいくなんてことは、なかなかないですから。

4バックから3バックへ

――7月31日の第18節・仙台戦を前にして、布陣を3バックへ変更しました。その理由の一つに「アグレッシブさを見せる位置を変える」とおっしゃっていましたが、具体的にはどういう意味ですか?

城福 [4-4-2]は前に合わせるコンパクトもできれば、後ろに合わせるコンパクトもできる。僕らはアグレッシブにやることを目指すべきなんだけど、それを両方やっていると必ず疲弊するわけです。

 ですが、(3バックで)少し後ろに合わせるコンパクトに重心を置くところからスタートして、そこでエネルギーを使おう、というふうにやれば、僕らが対等にやれる時間が80分まで延びるんじゃないかと思いました。80分まで延びれば・・・

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