Feature 特集

[横浜FM]MF 藤本淳吾「『まだいるんだよ』というところを見せたい」

2014/2/21 9:56

今オフ、横浜FMの補強における目玉選手が藤本淳吾だ。日本代表での選出経験も重ねてきたレフティーが、厳しい定位置争いを受け入れる形で名古屋から横浜へと籍を移した。ジュニアユース時代以来、17年ぶりとなるトリコロールのユニフォーム。そして同チームには、彼が尊敬してやまない稀代のレフティー・中村俊輔がいる。昨季まで中村俊輔が着けた『25』をまとう藤本は、語り口調、さらに佇まいも偉大な先輩にどこか似ていた――



聞き手:藤井雅彦 写真:徳丸篤史


いまは、まったくの“素”でいる

──ジュニアユース時代まで所属してきた横浜F・マリノスに加入しました。つまり「おかえりなさい」ということでいいですか?

藤本 あながち間違いではないね。だいぶ時間が経ったけれど(笑)。

──チームメートに知り合いも多いですよね。

藤本 同級生のテツ(榎本哲也)や(栗原)勇蔵はもちろん、シュンさん(中村俊輔)や兵藤(慎剛)、(齋藤)学、(飯倉)大樹と、もともと知っている選手が多い。だからスムーズに入れるよね。ちなみにエスパ(清水)からグランパス(名古屋)に移籍したときは同じ大学のアベショー(阿部翔平)くらいしか知らなかった。これは意外と大きな差かもしれない。それに今回は監督のことも知っているくらいだから。

──樋口監督とはプライマリー時代の師弟関係なんですよね。

藤本 自分が小学校4年生のときかな。かなり昔の話だから、正直言ってあまり鮮明には覚えていないけどね。変化というと、髪型が変わって、お互いに歳をとったことくらいかな(笑)。樋口さんは昔、髪が長かった。いまはだいぶスッキリした髪型になったよね。

──選手と監督という立場になって、接し方はやはり変化しますか?

藤本 もちろんそれなりの距離は必要だと思うし、リスペクトしているから敬意を払って接する。だから当時の関係性と同じではないよ。ただ、変わらない部分もある。

 例えば、惜しいプレーを褒めたりするときのリアクションは変わらないよね。『惜しいけどなあ』みたいな。樋口さんと昔の話を一度だけしたけど、そのときは『サイドに開けと言ってもお前は全然やらなかったな』と懐かしい話をされた(笑)。

──顔なじみの選手、あるいは監督がいるというのは周りの想像以上に大きなことなんですね。

藤本 オレ、けっこう気をつかうからね(苦笑)。でも、名古屋に移籍したときよりは気をつかっていない。だいぶラクでいられる。

 最初の移籍と2度目の移籍という違いもあるし、移籍した先のクラブの違いの二つが理由だと思うけど、やっぱり大きいのは2度目の移籍ということだね。1回目の移籍のときは普段の私生活のときから様子を見ていた。誰がイジり役で誰がイジられ役なのか、とか。

──いまはリラックスして生活できている、と。

藤本 生活に関しては、まったく猫をかぶっていないよ。どちらかというと流れに身を任せるタイプというのもあるね。だから、まったくの“素”でいる。周囲との緊張感よりも、どうすれば結果を出せるかを考えているかな。

──肝心のピッチ内ではいかがですか?始動から3週間が経過して、最初の公式戦が目の前に迫っています。

藤本 サッカーについては、まだ少なからず様子見しているかもしれない。頭で考えながらも、見てしまう。自分がボールを持っているときは、周りがどういうタイミングでどこに走るかを見てしまうし、ボールを持っていないときは味方がボールを出すまでの流れを見てしまう。組織の中の一員としてオートマチックに動くにはもう少し時間が必要だけど、その中でも少しずつスムーズになってきていると思う。

──始動日からキャンプを経て、コンビネーションが向上してきたという手ごたえですね?

藤本 自分の中ではだいぶ変わってきた。何より自分自身の体が動けているから楽しい。キャンプのときは自分のミスが多かったけど、コンディションも上がってきた。

──レベルの高い選手は感覚で分かり合える部分もあると思います。それでもある程度の時間は必要ということでしょうか。

藤本 感覚的に合う部分ももちろんあるよ。自分がわざと空けたスペースに味方がしっかり入ってきてくれたときに感じたりする。

 でも、もちろん時間も必要。主力で試合に出ている選手は一緒にプレーしている時間が長いから。ある程度の時間がかかるのはしょうがない。でも、逆に言えば時間が解決してくれる。自分は移籍してきた身だから。しっかり意識しながら練習すれば大丈夫だと思う。

──実際にプレーしてみて横浜FMのサッカーの印象は?

藤本 比較的、オーソドックスなサッカーだと思う。ただ、チーム全体として最初に見るのはシュンさんのところかなと。特に最終ラインの選手はそういうイメージがあると思う。とりあえず預けるというか。だから、そのポイントをもう一つ作れるようになりたい。シュンさんとオレとかね。そうなればチームとしてラクになる。

──ピッチ内では味方に強く要求するというよりも、黙々とプレーしている雰囲気があります。

藤本 外から見ていると、やる気があるのかないのか分からないみたい(笑)。気持ちを表に出すタイプではない。ずっと冷静でいられるから良い面でもあると思うけど、悪い言い方をすると冷めてるというふうになってしまう(苦笑)。自分としても、もう少し感情を出したほうがいいとは思っている。でもずっとこんな感じでやってきたから…。

──それも含めて、やはり時間は大切ですね。

藤本 徐々に分かってきてもらえていると思う。自分が右サイドからナナメに走ったときでもボールが出てくるから。あとは何か言わなくてもお互いに知っているというのもあるかな。新人のサッカー選手ではないからね。

シュンさんとはスゴく合うと思っている

──横浜FMには似たポジションで同じ左利きということで比較されがちな中村俊輔という存在がいます。

藤本 自分は全然、足りていないですよ。シュンさんは偉大です。あれだけ実績があって、昨季も結果を残している。もちろん知っている選手だけど、一緒にプレーした経験はあまりない。2007年に自分が代表に選ばれたときに何回か一緒にプレーしただけかな。

──ではチームメートになった感想を聞かせてください。

藤本 普段が見られるよね。試合はそのときの調子やコンディション、あとはチーム状況が影響してくる。でも、チームメートになると普段の自主トレが見えるし、キャンプのときは一緒に生活するからもっと素顔が見えてくる。一番思うのは、真面目にコツコツ積み重ねているから、それがすごい量と幅になっているということ。

──プレーしてみて、フィーリングは合いそうですか?

藤本 オレはすごく合うと思っている。自分がトップ下をやるよりも、シュンさんがトップ下にいて自分は右にいたほうがいいと思う。なんかね、ボールが出てきそうな感覚がある。そして実際に出てくる。

──いわゆるトップ下のポジションを争うという感じではない。

藤本 うーん、あまりないかな。自分がずっとトップ下をやってきたらそうなるかもしれないけど、そうではないから。できるけど、みたいな感じだから。名古屋はトップ下というポジションがなかったし、タマさん(玉田圭司)がそのあたりにいて、自分が周りを動いて、いい距離感でプレーしていた。エスパでは基本的に右サイドだったし、大学では左サイドだった。トップ下でプレーしていたのは…高校時代かな。

──では、こだわりはあまりない?

藤本 そういうのはないね。サイドのほうがいいかな。もちろん試合に出たいし、いまのシステムで自分が試合に出るとしたら右だと思う。

──同じピッチでプレーしてみた中村選手の特徴を教えてください。

藤本 シュンさんはボールを呼ぶタイプというよりも“ふらふら〜”としている(笑)。だから自分が最初に空いているスペースを見ておいて、次ここに出したらラクだろうなという場所を見付けておくことが大事。

 そうするとシュンさんは必ずそこに入ってきてくれるから、次の展開になっていく。もちろんそれだけじゃなくてダイナミックに相手SBの裏に走って行くプレーもしてくれる。いろいろな選択肢があるから一緒にプレーしていて本当に楽しい。


チャンスメークではなく、ゴールを狙う

──ここまでに『楽しい』というフレーズが何度か出てきました。あらためて、横浜FMの一員としての生活を楽しめていますか?

藤本 いまは楽しい。キャンプから帰ってきて、体がだいぶ動くようになったから。まだトップコンディションではないけど、いまトップにする必要はないと思う。あとは試合をやりながらいろいろ感じて、それを修正していくことが大事になる。早く試合をやりたい。

──週末には今季最初の公式戦である富士ゼロックス・スーパーカップが開催されます。

藤本 広島のサッカーは特殊という印象が強い。守備のときは後ろに5枚いて、その前に4枚が並ぶ。あまりボールを奪いに出てくるのではなく、しっかり構えてカウンターを狙ってくる。ただ、そうと分かっていても突っ込んでいかないといけない場面もある。そういうときにカウンターを食らわないように工夫しないといけない。どう打開していくか、考えるのが楽しい。

──広島戦に限らず、どんなイメージでプレーしていきたいですか。

藤本 なるべく裏に走って、できるだけ相手のイヤがるところに入っていきたい。ぶっちゃけて言うと、ゲームを作るときはある程度相手に任せたい。でもそうするとボールに触れない時間が長くなって自分のリズムを作れなくなってしまうから、そこは考えながらバランスを見ながらやる。1トップの選手とシュンさんと自分に近いほうのボランチ、それと右SBの位置やバランスが大事になる。

──移籍してきた身としては、ゴールという結果がほしいのでは?

藤本 本当にそのとおり。だから最初のゼロックス杯かACL、それと開幕戦。この3試合で必ず1点は取りたい。まぁ、ゼロックス杯で1点を取って、ACLでも1点を取って、開幕戦で1点取れれば完璧だけどね(笑)。冗談ではなく、それくらいの気持ちでやりたい。

 そうすれば周りから認められるし、自分にとっても自信になる。何よりサポーターがもっと期待してくれると思う。『ダメか』と思われてもイヤだから。昨季まではどちらかというとチャンスメークするほうが多かったけど、今年はそのイメージを変えるようなプレーがしたい。

──具体的にどんなゴールシーンをイメージしていますか?

藤本 うーん、こぼれ球とか(笑)。左から切れ込んでいく学は絶対に相手を抜ける。そのときに1トップがニアに寄っていくからファーで決める。あとは自分がニアに入っていて決めたり…。リアリティーあるでしょ?(笑)。そういうところで確実に決めたい。1点は1点だから。クロスからのヘディングとかはあまりイメージにないな(苦笑)。

──では、最後に2014年の藤本淳吾に期待することを言葉にしてください。

藤本 もうすぐ30歳だけど、まだ現時点では30歳になっていない。『まだいるんだよ』というところを見せたい。チャンスメークだけで終わるのではなく、自分には最後の部分での仕事を期待して頑張りたい。


藤本淳吾(ふじもと・じゅんご)
1984年3月24日生まれ。29歳。神奈川県出身。173センチ/69キロ。横浜Mプライマリー→横浜M.JY→横浜栄FC→桐光学園→筑波大→清水→名古屋を経て、完全移籍で横浜FMに加入。J1通算233試合出場45得点。国際Aマッチ13試合出場1得点

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