後半取り戻した積極性。「恐れ」を克服した鳥栖が競り勝つ
21分、小柏からのラストパスを興梠が左足で巧みに蹴り込んだ。広島などで活躍した佐藤寿人氏の記録に並ぶJ1通算161得点目は貴重な先制点となり、本拠地で初となる「声出し応援エリア」が設置されたスタンドから大声援を浴びた。そして、チームにも勢いをもたらした―はずだった。
「前半の出来を見れば、2点目を取っておきたかった」と悔やんだのはペトロヴィッチ監督。前半は積極的な守備と、小柏の走力を生かしたショートカウンターが機能。そして、前述のエースのメモリアルゴールは間違いなくチームに活力を注入した。そうしたホームチームの勢いに対して「恐れがあった」と川井監督。札幌がペースを掌握し、前半の45分を戦い終えた。
だが、そこからストーリーは一変する。「前半と後半とでは対照的な内容になった」とGKパク・イルギュが振り返ったように、後半は一転して鳥栖がイニシアチブを握って試合を進めていく。ハーフタイムに川井監督が選手から「恐れ」を取り除く言葉をかけたこと、より具体的なところで言えば、後半から登場した垣田の活躍が大きな要因だろう。後半開始直後から積極的に札幌最終ラインの背後を突く動きを見せ、持ち前の体の強さも生かして押し込み、チームに勇気を与えてみせた。
「サイズがあって運動量もある。日本人にはなかなかいないFW」と川井監督も絶賛する働きぶりをみせた。
そうして鳥栖が流れを変え、64分にファン・ソッコが頭で決めて同点とすると、70分には右サイドからのクロスに、札幌からの期限付き移籍のために出場できない岩崎に代わり左WBに起用されたジエゴが豪快なヘッドをぶち込み、一気に逆転へ。あっという間に札幌と鳥栖の立場が入れ替わった。
その後は札幌も新韓国人FWキム・ゴンヒらを投入して同点を目指すも、好機を多く作ることはできず。奪い取った流れを完全に掌握した鳥栖が敵地で今季初となる逆転勝利を演じ、北の大地から勝点3を手土産として持ち帰った。(文・斉藤 宏則)