今オフ、横浜FMの補強における目玉選手が藤本淳吾だ。日本代表での選出経験も重ねてきたレフティーが、厳しい定位置争いを受け入れる形で名古屋から横浜へと籍を移した。ジュニアユース時代以来、17年ぶりとなるトリコロールのユニフォーム。そして同チームには、彼が尊敬してやまない稀代のレフティー・中村俊輔がいる。昨季まで中村俊輔が着けた『25』をまとう藤本は、語り口調、さらに佇まいも偉大な先輩にどこか似ていた――
聞き手:藤井雅彦 写真:徳丸篤史
いまは、まったくの“素”でいる
──ジュニアユース時代まで所属してきた横浜F・マリノスに加入しました。つまり「おかえりなさい」ということでいいですか?
藤本 あながち間違いではないね。だいぶ時間が経ったけれど(笑)。
──チームメートに知り合いも多いですよね。
藤本 同級生のテツ(榎本哲也)や(栗原)勇蔵はもちろん、シュンさん(中村俊輔)や兵藤(慎剛)、(齋藤)学、(飯倉)大樹と、もともと知っている選手が多い。だからスムーズに入れるよね。ちなみにエスパ(清水)からグランパス(名古屋)に移籍したときは同じ大学のアベショー(阿部翔平)くらいしか知らなかった。これは意外と大きな差かもしれない。それに今回は監督のことも知っているくらいだから。
──樋口監督とはプライマリー時代の師弟関係なんですよね。
藤本 自分が小学校4年生のときかな。かなり昔の話だから、正直言ってあまり鮮明には覚えていないけどね。変化というと、髪型が変わって、お互いに歳をとったことくらいかな(笑)。樋口さんは昔、髪が長かった。いまはだいぶスッキリした髪型になったよね。
──選手と監督という立場になって、接し方はやはり変化しますか?
藤本 もちろんそれなりの距離は必要だと思うし、リスペクトしているから敬意を払って接する。だから当時の関係性と同じではないよ。ただ、変わらない部分もある。
例えば、惜しいプレーを褒めたりするときのリアクションは変わらないよね。『惜しいけどなあ』みたいな。樋口さんと昔の話を一度だけしたけど、そのときは『サイドに開けと言ってもお前は全然やらなかったな』と懐かしい話をされた(笑)・・・