Feature 特集

イタリアと日本の共通点と相違点。日本の敗退は“通過儀礼”だ/日本代表総括

2014/6/28 13:30

イタリアはピルロらオーバー30の下の世代にワールドクラスがいない



イタリア人監督、ポゼッションサッカー

 クイアバで日本がコロンビアの前に屈したその2時間前、ナタウではイタリアがウルグアイに0-1で敗れて、同じようにグループステージ敗退を喫した。

 同じイタリア人監督の下で、同じようにポゼッション志向のテクニカルなスタイルを掲げながら、それをピッチ上で表現し切れなかったという点で、両者のW杯は似通っているようにも見える。しかし、それぞれの国のサッカーにとってこの敗退が持つ意味合いは、大きく異なっている。

 8年前のドイツ大会を含め過去4回優勝しているイタリアにとって、前回の南アフリカ大会に続くGS敗退は大きな屈辱だが、同時に、強豪国の看板に胡坐をかいて変革を怠ってきたサッカー界が機能不全に陥りつつあるその必然的な結果だった。

 かつて「世界で最も美しいリーグ」と呼ばれたセリエAは、UEFAカントリーランキングでも、観客動員数でも、イングランド、スペイン、ドイツに水をあけられて久しい。どのクラブも目先の勝利に拘泥するあまり育成部門を軽視して来たそのツケは、ドイツで優勝を経験したブッフォン、ピルロ、デ・ロッシらオーバー30に続く世代に、ワールドクラスと呼べるプレーヤーが皆無という深刻な現状をもたらしている。

 2010年に就任したプランデッリ監督は、そうした状況を踏まえて代表主導でカルチョの世界に改革の風を吹き込もうと、イタリアサッカーの伝統的なスタイル(堅守速攻・攻守分業)とは異なるポゼッション志向のスタイルを代表に導入した。

 ユーロ2012の準優勝でその最初の果実が実ったようにも見えたのだが、今大会では、個のクオリティーの低下に加えて、主力の故障離脱、一部選手の逸脱行為によるチームの内紛などで、戦術プロジェクトそのものが空中分解するという最悪の結末を迎えることにになった。その意味でイタリアとってこの敗退は、強豪国の斜陽を象徴する出来事だったと言うこともできる。

日本は「成長」から「成熟」のときへ

 一方、日本にとってこの敗退は、弱小国が中堅国として世界にその地歩を築く成長のプロセスにおいて否応なく直面するべき、一つの通過儀礼という意味合いを持っているように思える

 プランデッリ監督と同時期に就任したザッケローニ監督が取り組んだのは、欧州の基準で日本のサッカーを観察し、その長所や持生かす戦術プロジェクトアイデンティティーを持ったチームを作り上げることだった。日本人の特徴を生かして戦うべき、という抽象的な議論はそれまでもあったが、それを具体的なサッカーのコンセプトとスタイル、戦術というピッチ上のレベルにきちんと落とし込んでチームを構築し、一つの完成形を示したのは、日本代表史上ザッケローニ監督が初めてだと言っていい。

 その総決算たるべき今大会の結果は確かにネガティブなモノだった。しかしだからといって…

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