Feature 特集

W杯をファイナルまで見届ける意味

2014/7/16 19:00

 日本のW杯敗退が決まってから19日後にリオで決勝が行われ、ドイツの優勝で大会は幕を閉じた。この歴史的な一戦をTVで目にしたファンは少なくないと思うが、日本が参加した大会の締めくくりとしてイメージしていた人はどのぐらいいただろうか。その翌日にはJ1リーグが再開し、日本代表の一員として戦った選手はすでに4年後に向け始動している。

 巷では元メキシコ代表監督のハビエル・アギーレ氏が次期日本代表監督に就任すると噂され、正式発表が秒読み段階とも言われている。もちろんJリーグは大事だし、次期監督が早く決まらないと、強化プランが進んでいかない。ただ、その一方で今大会の検証はどうなっているのだろうか。ファイナルまで現地で取材を続けてきて、日本代表に何が足りなかったのか、どういう課題があるのかを本当の意味で知るには、3試合だけでは不十分だということを思い知らされた。

「グループステージは予選。本当の戦いは決勝トーナメントから」とよく言われるが、過酷な環境の中で行われた今大会の決勝トーナメントはまさしく本当の戦いだった。綺麗なサッカーを90分続けて上位まで進出した国は一つもない。伝統的に華麗なパスワークを好むオランダも、メッシをはじめトップクラスの攻撃陣をそろえるアルゼンチンも、時に厳しい時間帯を耐えながら、泥臭く勝ち上がった。

 ネイマールを負傷で、チアゴ・シウバを出場停止で欠いた準決勝のブラジルは、意を決してドイツに真っ向勝負を挑んだが、見事にスキを突かれる形で早い時間帯に失点し、そこから一気に崩壊してしまった。最も攻撃的なスタイルを継続したドイツでさえ、決勝トーナメント1回戦では伏兵のアルジェリアにギリギリまで追い詰められ、フランスとの準々決勝では苦しい時間帯をしのぎ切り、1-0で勝利した。

“自分たちのサッカー”で勝利を目指し、惨敗したあとでも「方向性は間違っていない」と前を向くのはいい。しかし、どれだけ理想的なスタイルを掲げても、勝負という現実に向き合う覚悟と意志がなければ、突き詰める努力がなければ、厳しい勝負の世界では夢想でしかない。選手が、ファンが、メディアがこの決勝を目撃して感じたことを別世界の物語とせず、日本代表に照らし合わせ、本質的な課題に向き合うこと。それこそが、4年後へ向けての第一歩となるはずだ。(河治 良幸)

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