Feature 特集

日本代表アギーレ新監督 ベースは個々の判断力と1対1の局面勝負

2014/7/25 11:00


 コンパクトな守備ブロックを維持しながら厳しくプレスを掛け、ボール奪取からのカウンターで素早く効率的にゴールを奪う。アギーレがこれまで率いてきたオサスナやアトレチコ・マドリー、サラゴサ、エスパニョールといったスペインのクラブは、みな堅守速攻スタイルをベースに戦っていたという共通点がある。

 とはいえ、それが彼の理想とするスタイルなわけではない。オサスナやアトレチコ、エスパニョールはいまも昔も堅守速攻をクラブカラーとしてきたチームであり、アギーレは既存のスタイルを尊重していたに過ぎない。サラゴサに至っては、当時はクラブもチームもボロボロで、監督が誰であれ守備を固めて負けないサッカーに徹するほかなかった。

 こうしたスペインでの経験について、先日アギーレはあるインタビューで次のように語っている。

「どの監督も例外なく自身のスタイルを持っているが、自分で選手を選べる代表は別として、実際にスタイルを決めるのは選手たちだ。監督がチームに順応しなければならない。エスパニョールではチームを残留させるために自分のスタイルを犠牲にしたが、後悔はしていない」

 この言葉を額面どおりに受け止めるなら、02年、10年と2度のW杯を率いたメキシコ代表こそ、アギーレの目指すフットボールを最も体現していたチームということになる。守ってはマンツーマン気味に球際でしぶとくボールホルダーに食らい付き、攻めては粘り強くボールをキープしながらショートパスをつなぎ、アタッカーの個人能力を生かしてフィニッシュに持ち込む。

 もちろんチームとして描く共通意識はあるが、ベースとなるのは選手個々の判断力と1対1の局面勝負。それは表面的には同じポゼッション&プレッシングスタイルのように見えても、個の力で劣る部分を組織力や連動性で補おうとしてきた日本とは根本的に発想が異なる。

 選手たちにハードワークの意識を植え付け、チームとしてコンパクトなブロックと高いインテンシティーをベースとした守備を構築することが第一。それができた上で、できることならボールを支配し、アタッカーのタレントを生かした攻撃をしかけていく。そんな手順を踏むことが予想されるアギーレのチーム作りは、この4年間ポゼッションとプレッシングを通してゲームを支配し続けるという理想を追い求めてきた日本の人々にとって、物足りないものに映るかもしれない。

 全選手に守備意識を徹底することで最終ラインのもろさは補われ、攻守のバランスは改善されるだろう。持ち駒や対戦相手、試合状況に応じて柔軟にシステムや戦略を変えていく采配力は前任者より確実にある。一方、具体的なメソッドや明確なアイディアに欠ける攻撃面においては、戦術的な進化はあまり期待できない。その部分は選手間で話し合いながら連係を高めていくしかなさそうだ。

 アギーレ率いるメキシコ代表が2度のW杯でともに16強入りを果たしたのは、選手個々の力がそのレベルにあったからだ。むしろ個々の力が8強レベルにはなかったからこそ、2度とも16強止まりに終わったとも言える。翻って今大会で日本が惨敗した原因は、攻守に1対1で戦えない、そして局面局面で何をすべきか個々が正しい判断を下せない、ゲームインテリジェンスを含めた個の力の欠如にあった。その日本が上を目指すための監督として個の力をベースに戦うアギーレを選んだことは、矛盾しているようにも思えるし、真の成長を求めるがゆえの決断と取ることもできる。いずれにせよ、それが決してラクな道ではないことは確かだ。(工藤 拓)

EG 番記者取材速報

League リーグ・大会