鹿島の1点目は、左サイドからダイアゴナルに走り込んだ中村の動きを見逃さずに出した柴崎の縦パスから生まれた。ボランチとして広角にパスをさばくだけでなく、機を見てゴール前まで飛び出しチャンスを作る。その機動力の高さは、気温30℃を超える過酷な環境の中でも際立っていた。
ただ、この日はボランチとしての働きも素晴らしいものだったが、63分のルイス・アルベルト投入を機にトップ下に入ってからのパフォーマンスこそ真骨頂だったと言えるだろう。相手の5バックと4人のMFの間を自在に走り回り、ときにはパスを受けて起点となり、ときにはその動きで守備を引っ張ってスペースを作る。広島の守備は終始その動きに翻ろうされた。
とはいえ、柴崎は急にそうした動きを見せるようになったわけではない。彼は以前から走っており、周りが柴崎の意図を理解した部分が大きい。
2点目のルイス・アルベルトの得点が生まれたのは、ゴール前に走り込む柴崎にカイオがパスを出し、柴崎のシュートのはね返りから連続攻撃をしかけたことが相手の混乱を誘った。3点目の西のボレーを呼んだCKも、同じようにゴール前に走り込んだところにパスが出たことで倒されて得たFKがCKにつながった。ダヴィのゴールをアシストした4点目はオフサイドラインを抜け出す動きを昌子が見逃さなかったことが生んだもの。5点目は、ダヴィが猛然とゴールに走り込む柴崎に、お返しのプレゼントをした得点だった。
「彼の足には宝箱がある。それを開けるとものすごい光を発する」とトニーニョ・セレーゾ監督から絶賛を浴びた柴崎だが、周囲の理解を得ることで、さらにその輝きは増している。
「前に比べるとパスは集まるようになっているし、ここ最近はそこからチャンスに結び付けるパスだったり、ゴールもフィニッシュシーンまで絡めている。そういう部分での信頼感は出来上がってきている。僕自身もそういったランニングをしながらおとりであったり、自分がもらうことだったり、攻撃の厚みができている感覚があるので続けていきたい」
左腕には主将のマーク。柴崎を中心とした新たなチーム像が見えてきた。(田中 滋)