Jリーグ日程の合間を縫って、U-21日本代表キャンプが福岡県内で行われた。3日間という限られた合宿の期間で、手倉森誠監督はチームに何を植え付けたか。13日の練習試合、また戦術練習などを通してチームコンセプトがより浮き彫りになってきた。

数少ない合宿の機会を選手たちは有意義に過ごした様子
今季3度目の合宿、固まってきた守備と意識
11日〜13日、福岡県内でU-21日本代表候補トレーニングキャンプが行われた。3月の東京合宿、6月の大阪合宿を経て、当面の目標である9月開幕のアジア大会を前にした最後の今合宿では、守備面に重きが置かれた。
3日間のうち、実質的な戦術練習は2日目のみ。その練習後にはCB陣を手倉森監督が集め、レクチャーする光景も見られた。
今合宿でトライした部分について、「ウェイトを持たせたのは守備。自分たちの原則的な場所、そこから下げられたところ。その二つのバリエーションは(選手に)刷り込んだ」と手倉森監督は語っている。
守備時の立ち位置を決めたのは、指揮官が「『守ってからのカウンター』が、このチームはハマりそうだなという印象」を持っているからこそ。
DF岩波拓也も「合宿では守備の練習も重ねたし、チャレンジ&カバーや、どこでプレスを掛けるのかなど、チームとしてしっかり確認できた」と指揮官からの“刷り込み”を消化できたと話す。また、13日の練習試合・福岡戦後にFW鈴木武蔵が「今日はあまり前から行けなかったが、試合後に中盤の選手と3枚のうちの1枚が前に出て(相手を)ハメ込んでいいんじゃないかということも話し合った」と明かしたように、即座にコミュニケーションを取る関係性を構築しているのは明るい材料と言える。
“代表”という、決して長くない限られた時間の中で意思統一を図るには積極的なコミュニケーションは欠かせない。これもまた、指揮官が求める柔軟性の一つだろう。
そして、この代表の一番の注目点は意識面だ。ブラジルW杯で日本代表は“自分たちのサッカー”という言葉を多用し、結果を出すことが叶わなかった。
一方で、このU-21日本代表は「最大の戦術は勝つこと」(手倉森監督)が絶対理念。岩波も「勝ちにこだわることが大事だし、それも戦術の一つ」と話す。試合中にシステムを何度変更しても、その根底の部分がブレなければ問題ないというスタンスだ。手倉森監督は選手各自に、複数のポジションをこなすことを求めている。それは、状況に応じて最大限のパフォーマンスが発揮できる選択肢を持っておくためだ。決して自分たちありきで戦わず、時には相手に応じて戦い方を変える。国際舞台という結果が求められる戦いの中で選択肢は多いに越したことはない。
「『何で今日、このポジションなんですか』って言う選手は誰もいないから仕事がしやすいし、そういったことで可能性を高め合えるぞという話は選手たちにした。理解力があるグループだと感じる」と手倉森監督。試合に臨むための準備面に、手ごたえはあったようだ。(杉山 文宣)
手倉森監督が選手たちに授けた二つのテーマ

13日に行われた福岡との練習試合で1得点を決めた大島僚太。左腕にはキャプテンマーク
柔軟性と割り切り。その二つの確認が今回の練習試合のテーマだった。一つ目である柔軟性とは「いろいろなバリエーションを持っておきたい」(手倉森誠監督)というチームの多様性の部分。この試合だけでもU-21日本代表は[ 4-3-3]、[4-2-3-1]、[3-5-2]、[3-4-2-1]と目まぐるしくシステムを変えた。特に後半に用いた3バックは練習での落とし込みもなく、映像も見せていない。
「突然やったほうがハマるんじゃないかな」と手倉森監督も笑いながら話したが、「3バックもやるんだなという気持ちにさせたのは良かった」とも続けた。明確な意図がその背景にあったのだ。指揮官自身、「手ごたえも感じている」と話したようにバリエーションの増加という点には一定の評価を下したが、前半の[4-3-3]から[4-2-3-1]への変更は手倉森監督が指示したモノ。「自分たちでそういう対応ができればチームとして良い方向に行く」と大島僚太は指摘していたが、柔軟性の中に選手たちの自主性が出てくるかどうかは今後の課題となりそうだ。
そして、もう一方の割り切りとは「勝てなければ話にならない」(手倉森監督)という勝利主義へのアプローチだ。練習試合ながら、後半のピッチに向かう選手たちに「2-0で勝っているんだから余計なことをするな」と手倉森監督は声を掛けた。異例とも言える対応だが、チームの勝利のためにいかに犠牲心を払えるかも選考基準の一つということ。「勝っていたとしても、色気はいらない」(手倉森監督)。
その意図を汲んで、選手たちはしっかりと試合をクローズさせた。ゲーム自体に派手さはなかったが、これら二つのテーマを観点とすれば“中身は濃かった”と言える。テーマに向き合えたという点で、充実の練習試合となった。(杉山 文宣)