工藤には、ゴール後にやろうと決めていたことがあった。前節の甲府戦でも考えていたのだが、久しぶりの得点ということもあって忘れていたのだという。次こそはと、そう決めて臨んだこの試合、唯一のシュートを放ったのは74分。高山からのパスでディフェンスラインの裏へ抜け出すと、GKと1対1になり、落ち着いてボールをゴールへ流し込むことに成功する。
今度は、忘れなかった。カメラに向かって右手で一本、左手で四本、それぞれ指を立てる。『14』。右足首骨軟骨骨折のため、ボールが蹴られない日々を過ごす仲間へ送るメッセージだった。「見舞いに行って元気な姿を見られた。(田中)順也くんが抜けて、後半戦のカギになる選手だった。僕らよりも一番健ちゃん(狩野)が悔しいと思う。けがしている選手とも一緒に戦いたい」。病室で約束したことを、今季初の公式戦2試合連続ゴールで守ってみせた。
ただ、苦しんでいたのはけがを負った狩野だけはない。工藤自身も苦しいシーズンを過ごしていた。リーグでのゴールはいまだに『5』。この試合でも、シュートは一本だけだった。「今までみたいにニーヤン(レアンドロ・ドミンゲス)がいて、チャンスがたくさんできるチームではない」と割り切りながら、守備はもちろん、背番号10が抜けたため攻撃の組み立ての仕事もしている。さらに、ようやく前へ出て行っても以前のような良質なボールが供給されることは稀だ。
それでも、徐々に前線の3枚を始め、チームとして新たに攻撃の形は構築されてきた。チャンスは多くないが、それでも生まれてはいる。決して満足しているわけではない。だが、工藤は言う。「一本しかない中で決め切る。そういう質を求めていきたいと思うし、しっかりと攻撃に守備にハードワークしていれば、チャンスは来るというのをいまは信じてやる」。 ( 石原 遼一)
工藤 壮人(くどう・まさと)
1990年5月6日生まれ、24歳。東京都出身。177cm/74kg。柏U-15→柏U-18を経て、09年にトップチームに昇格。1日には入院中の狩野のお見舞いに出向き、激励した。J1通算116試合出場44得点。J2通算27試合出場10得点。国際Aマッチ4試合出場2得点。