直近の J1第22節・名古屋戦(8月30日)における大島のパフォーマンスは、彼の持っている資質を考えれば決して褒められる内容ではなかった。単純なパスミスで反撃の契機を逸し、らしくないボールの失い方もあった。だが、それらのミスは決して回数が多かったわけでもない。それでも一つひとつが目立ってしまうのは、中心選手の証明でもあり、宿命でもある。
実際、不調の中でも相手のプレスを外す圧巻の技術を披露し、中村とのパス交換で相手の守備網を揺さぶるプレーはいつもどおり発揮できていた。中村と大島はセットでチームの“核”となる。これまで、それを彼らはプレーで印象付けてきた。しかし、C大阪戦は足首を痛めた中村が不在。代わりに入った森谷はボランチ出身の選手ではあるが、川崎Fにおける定位置は2列目だ。必然的に、ゲームの指揮棒は大島に託され、彼の出来次第で勝敗を分けるという状況になった。だが、背番号16はそのプレッシャーをはねのけ、期待以上の力を見せた。開始6分の豪快かつ華麗なミドルシュートで大阪に訪れた観衆に挨拶代わりの一発を見せると、浅深問わず幅広くボールを動かす中で常に顔を出し、高い位置でのチャンスメークでも存在感を発揮。ボールとチャンスがあるところに大島がいる。そんな90分だった。
「今まで対戦してきた相手の中でもスペースがあった」と本人は好調の要因を語る。確かにC大阪の大島に対するチェックは緩かった。ただ、そうなれば彼の独壇場であり、少しでもスキを見せれば決定的な仕事ができることを証明。その姿は、この日不在だった中村を彷彿とさせたことも付け加えておきたい。その中村が背負う川崎Fの“14番”の重みは想像に難くない。だが、それを受け継ぐ資格が大島にはあると、この日の観衆は感じたのではないだろうか。大島僚太が川崎Fの象徴となる日は、もうすぐそこまで来ている。(竹中 玲央奈)