一言で言えば“采配的中”だ。先発の人選、戦術浸透、選手交代のメッセージ性。それらがすべて噛み合った会心の勝利だと言える。
試合前のメンバーリストを見て、不安を覚えなかったと言えば嘘になる。わずか3日前の天皇杯4回戦・愛媛戦(2○1)で守備戦術への適応に難が見られたカルリーニョスと、決して守備が得意とは言えない泉澤が先発。守備の整備が最優先な中、この選択は蛮勇にも映った。
だが、試合が始まってみると、渋谷監督の慧眼に唸らされることになった。準備期間が短い中で「攻撃には着手できていない」と語っていた指揮官は、攻撃でスペシャルな武器を持つ選手を並べてその課題をひとまず解消。1点目は泉澤のドリブルが突破口となり、2点目はカルリーニョスのFKから生まれた。
守備面では規律の浸透に成功し、「守備のオーガナイズで言えば、あまり崩れている感じはなかった」(渋谷監督)。中盤を統率した金澤も「ディフェンスの部分でうまくいっていない感じはしなかった」と手ごたえを口にした。
最終的には押し込まれる時間帯が続いたが、「相手がリスクを背負ってくるときにゾーンは非常に難しいと思うので、ピンチだと思っているときには人に付く」という渋谷監督の考えを選手たちが迷いなく実践。通常のゾーンディフェンスではなくマンツーマン気味の守備で最後までしのいでみせた。「そこはもう個人の戦術とかコミュニケーションのところで、マンツーマンになっていた」(渋谷監督)とはいえ、中途半端な使い分けではスキを生んでいたはず。チーム全体に共通意識を持たせることに成功した点は見逃せない。また、より運動量と対人守備に優れた選手を投入した選手交代も的確で、明確なメッセージをピッチ上の選手たちに送った。
まだ評価を下すには時期尚早とはいえ、この試合に関して言えば、渋谷監督の手腕が際立ったという事実に疑いの余地はないだろう。(片村 光博)