ボールを運んでも、相手をシュート数で上回っても勝ち切れない。甲府のもどかしい悪循環を断ち切った一つの決め手が、河本の起用だった。
甲府は天皇杯4回戦・北九州戦から中2日の連戦で、攻撃陣は複数の主力級を負傷で欠く駒不足。そんな中で河本がつかんだ4カ月半ぶりの出場機会だった。大卒2年目の彼は昨季の後半戦で、J1残留に大きく貢献している。しかし、今季は7月上旬に負った右足かかとの負傷があったにせよ、ボールを回す新しいスタイルに適応できていなかった。
城福監督は「ゴールへ向かうタイミングを逃さないことに重きを置いた」と、鳥栖戦の狙いを説明する。となれば河本の出番だ。普段は自然体で、つかみどころのない彼だが、試合になると誰より激しさを見せる。彼の抜け出し、独特の間合いを持つドリブルは有効で得点につながったCKも彼の仕掛けからだった。
青山は「アキト(河本)のところで時間を作れたので、後ろもラインを上げることができた。コースを切るのかボールに行くのかという面も、後ろの状況を見ながらやってくれた」と守備面の好影響を口にする。河本は「スイッチを入れる動きができたらいいと思っていた」という狙いを、攻守で表現した。
盛田のヘッドが決まったCKの場面は「GKの前に入るが若干遅れて」(河本)ボールに触れなかった。しかし、結果的には彼の立ち位置がGKの視界を遮り、反応の遅れを誘った。もっともゴールを背にして立っていた河本から、GKは見えてない。「隠れたかな…。なら良かった」(河本)という、意図せぬ“アシスト”となった。
昨季もJ1第19節・C大阪戦(1○0)でプロ入り初先発に抜擢され、プロ初ゴールで8連敗を止めた。今季も彼の起用が、8戦勝ちなしのチームを救った。(大島 和人)
河本 明人(かわもと・あきと)
1990年5月1日生まれ、24歳。滋賀県出身。174cm/71kg。甲南中→流経大柏高→流通経済大を経て13年、甲府に加入。J1通算34試合出場1得点。