ベテラン・盛田の努力が残留を争う甲府を支える
この試合のヒーローは、決勝点を決めた38歳だろう。ただし盛田は「そんなに調子が良くなかった」と自らのプレーを振り返る。彼は激しい寄せを受け、ポストプレーでいつもの精度を出せなかった。
とはいえ盛田の貢献は別の部分にある。「守備に関しては(不調でも)ブレずにできるところ。そこだけは怠らずやろうと思っていた」(盛田)。
鳥栖の左CBは日本代表の坂井だが、彼はフリーでボールを持つ場面が多かった。「ボランチから精度の高いボールが出る」(盛田)ことが鳥栖の特徴で、それならばあえてCBにフィードを蹴らせたほうがいいと判断したのだ。加えて前線が後方に寄れば、コンパクトな陣形も保ちやすくなる。
盛田は今季からFWに再転向したが、06年から昨季までCBを務めていた。だから守備の“勘所”を、十分に理解している。彼の巧みな位置取り、パスコースの限定が“甲斐ナチオ”を密にした。蹴られることはあったが、甲府がコンパクトな陣形を保って、前後半ともセカンドボールを支配した。
53分のヘディングは、盛田が相手のクリアへ咄嗟に反応し、力強く叩き付けた。彼は毎週必ず、見た目こそ地味だが「結構きついんですよ」という首のトレーニングに取り組んでいる。ただ、謙虚で照れ屋な“盛さん”は自分の努力を誇らない。「谷さんのおかげ」とマンツーマンで個別練習に対応している谷真一郎フィジカルコーチへの感謝を口にしていた。
目に見えない努力が、見える結果を支える̶。浮き沈みの激しいサッカー人生の中でも、地道に積み上げてきた。盛田は、残留争いの渦中でもがく甲府のお手本だ。(大島 和人)