
言葉の端々からクラブ愛がにじみ出る
裏方として約5年。だからこその現在
今季より磐田でプレーする松井は監督交代後のチームのムードをこう語っている。「みんなが監督をリスペクトしていると感じる。シーズン途中の監督交代は何度も経験しているけど、こういう雰囲気になることは珍しい」。たった2日間でチームに好影響を与えられたのは磐田OBの名波監督だからこそ、である。
08年の現役引退後もピッチの外からクラブを支えてきた。09年に磐田アドバイザーに就任。自らを“なんでも屋”と称し、多分野にわたって磐田をサポートしてきた。アカデミーの練習に顔を出し、時には自ら営業活動を買って出たこともあった。選手たちの兄貴分であることは現役時代と変わらず。文字どおり“アドバイザー”として選手たちの声に耳を傾け、相談に乗った。08年の入れ替え戦で辛くもJ1に残留し、新体制で臨んだ09年。開幕戦で昇格組の山形に大敗すると、DFリーダー・那須(現・浦和)が電話したのも名波監督だった。J2に降格した昨季も解説業のかたわら、試合後に関係者に電話を入れるなど愛するクラブを常に気遣ってきた。
それでいて“裏方”の域を出ることはなかった。愛媛戦の会見では先発について「こう組み合わせたら面白いということは考えていた。ただ、クラブに進言する立場ではなかったので」と語っている。現場を尊重するからこそ、決して前に出ることはなかった。
にじみ出るクラブ愛。選手たちは「このタイミングで監督になるとしたら名波さんしかいないと思っていた」と口をそろえる。(文・南間 健治)