■ヴァンフォーレ甲府
相手がバランスを崩して出てきたところを狙う
「守備の強固さは絶対に譲れない」と城福監督は言い切る。戦力、資金力の限られた甲府がすべてを追い求めようとしたら、すべてが中途半端で終わってしまう。もちろん人を掛けてボールを動かす遅攻を捨てたわけではないし、勝ち点3を放棄するということでもない。しかし、指揮官は「相手に特徴を出させないということは絶対にサボらない。その中でわれわれがどうゴールを奪い、勝ち点3を取るかという順番は変わらない」と、チームの優先順位を強調する。
甲府は第25節・神戸戦(2○0)、第26節・横浜FM戦(0△0)と2試合連続で相手を完封しており、堅守は自信を持っている。さらに勝ち点3差とはいえ、甲府が残留圏の13位、大宮は降格圏の16位という立ち位置の違いも試合運びに関係する。GK荻の「0-0で試合が推移すれば焦るのは向こう」という読みは、決して的外れでないだろう。大宮の攻撃を封じ、バランスを崩して出てくるのを待つのが、プロビンチアのゲームプランだ。
現在勝ち点28の甲府が、残り8試合で残留安全ラインともいうべき勝ち点40付近まで勝ち点を積めるならば、相手の順位をとやかく考える必要はない。しかし、甲府が資金力で上回るライバルたちを今後ラクに退ける展開は予想し難い。ギリギリの争いになれば“どこから勝ち点を取り、どこで勝ち点を落としたか”が結末を左右する。城福監督も閉幕まであと2カ月のいまから「34節(最終節)で決まるようなシーズンになり、甲府がその渦中にいるという状況は十分に想定内」とまで口にしている。覚悟を固めた甲府にとって、3季連続のJ1をつかむためにこの直接対決は決して落とせない一戦だ。(大島 和人)
■大宮アルディージャ
一戦必勝。指揮官の変わらないスタンス
昨季まで甲府でコーチを務め、“古巣戦”となる渋谷監督。2年間苦楽をともにした甲府・城福監督との対戦を「一つの目標としてやっていた」という指揮官にとって、言うまでもなく特別な試合だ。かつてのホームへ乗り込む一戦を前に、「こういう形で山梨に戻って試合ができるのは、何かの縁だと思う。やっていて不思議なモノだなと」と語り、4年間を過ごした甲府での日々を懐かしんだ。
ただ、試合となれば個人的な感情が入り込む余地はない。「まだまだわれわれは何も達成していない。対甲府だからというよりは、目の前の相手に対してしっかり戦わないといけない。(今季の甲府戦は)リーグ戦で0-2、ナビスコカップで0-3、ハッキリ言って完敗だった。同じ相手に3回負けるというのはあってはならないこと。しっかりと勝ちにつなげたい」。そこにあるのは残留への執念、そして2度も完敗を喫した甲府へのリベンジの思いだけだ。
“リベンジマッチ”を戦うにあたり、甲府を熟知する指揮官の存在は大宮にとってアドバンテージになる。堅守を誇る甲府の[3-4-2-1]システムについて渋谷監督は「簡単に言うとボール中心のゾーンディフェンス。人が動こうがそんなに大きくズレることも、食い付くこともない」として、数字上は同じシステムながら人への意識が強い徳島や清水との違いを認めた。ただ、その上で「システム上の弱点もある」とも指摘。自らその構築に携わったからこそ分かる急所を突くべく、策略を巡らせる。
渋谷監督は“一戦必勝”を合言葉に、就任後のリーグ戦を3勝1敗で駆け抜けてきた。古巣を相手にしても、そのスタンスは少しも揺らぐことはない。(片村 光博)