65分、相手のCKをはね返したところから生まれたカウンターのチャンス。山口慶から中央でパスを受けたキム・ヒョヌンは左サイドの町田にボールを預けると、そのままゴール前へと突進していった。
「(幸野)志有人が前に抜けたから、僕は志有人からのクロスに備えて入って行った」(キム)
果たして、幸野から完璧なお膳立てを受けたキムは、左足でダメ押しとなる3点目を流し込んだ。
シーズン中盤以降、キムの充実ぶりは明らかだ。ハイボールを放り込まれれば183cmの身長よりも高く感じられる打点のヘッドではじき返し、裏に出されたボールには脚力の強さを生かした加速で食らい付く。相手からしたら厄介この上ない存在だ。
ただ、それ以上に特筆すべきは、パス能力の向上だろう。夏が終わりに近付くころから「怖がらずに自信を持ってプレーするために努力している。縦パスにチャレンジしながら自信を付けられるようにしたい」と、さらなる進化を目指してきた。そしてその成果は、シンプルに前に運ぶ傾向の強い現在のチームに還元されている。CBでコンビを組むことの多い山口智が攻撃の起点として相手に警戒される中、キムが山口智からのリターンパスを付けられるようになった好影響は見過ごせない。
チャレンジの中で醸成された自信が、攻守両面にプラスの効果をもたらしていることは間違いない。「怖がらずに自信を持ってプレーする」。その意識が今回、得点という明確な形で報われたのだろう。
J1昇格プレーオフの出場権争いが激しくなるにつれ、チームが精神的に守りに入ってしまう可能性も否定できない。そんなときに伸び盛りの23歳が見せる積極性がチームを救うかもしれない―。いまのキムは、そんな期待を抱かせてくれる。(片村 光博)
キム ヒョヌン(KIM Hyun Hun)
1991年4月30日生まれ、23歳。韓国出身。東莱中→晋州高→弘益大を経て、昨季千葉に加入。元U-22韓国代表。J2通算53試合出場4得点。