
決定機を外して頭を抱える本田
ハメス・ロドリゲスのように…
ジャマイカはさほど強いチームではなかった。サッカー国というより陸上国だからね。身体能力の高い選手はいた。競走になると半歩速いというのはあった。
結果としては、相手のオウンゴールのみの1-0だった。2点目、3点目がなぜ入らなかったかを考えていくと、一つのプレーがポイントになったと言える。
前半、決定的なチャンスが本田圭佑に訪れた。酒井高徳からパスを受けてGKと1対1になった場面だ。サッカーというのは、試合の中でのリズムなどが結果に影響する。本人も反省していただろうけど、あのループシュートを決めていればチーム全体が安心してプレーできるようになり、3、4点目が入っていたと思う。
結果論とも言えるが、点差が開かなかった大きな原因だね。転がすシュート、インステップでのシュート、そしてループシュート。3パターンくらいある中で、彼はループシュートを選択して、失敗した。あそこは、W杯でのコロンビアのエース、ハメス・ロドリゲスのように決めてほしかった。ああいうのが入らないと、1-1の引き分けもあり得た。サッカーは、そういう怖さがあるスポーツだ。
酒井高は、あそこまでいってラストパスを通せたのは良かった。酒井高がああいった良いパスを通すことはこれまでほとんどなかった。あれが決まっていたら、酒井高の評価ももっと上がったかもしれない。
課題は“高さ”と“色気”
もちろん、2点目、3点目が生まれなかったのは、本田だけのせいだけではない。このチームには高さがない。ヘディングが強い選手がいると、相手のDFはそれに釣られる。どうしてもそこに神経がいくからね。日本には高さの課題がずっとある。ならば、下で攻めていこう、となるが、その中でも狭いエリアで出すトリッキーさが足りない。ときどき良いシーンもあったけれどね。ワンツーで崩すなら、もっと色気を出さないと。
「ポン、ポン」、とまでは行くけれど、「ポンポンポン!」とはいかない。柿谷曜一朗と香川真司のコンビなら、そういう可能性は広がるが…。武藤嘉紀には、まだ色気が足りないかな。それは、小林悠にも言える。もっと良いコンビネーションを創り出して、そこに快感を得るようでないとね。これは、代表チームだからこその要求だ。ブラジル、メキシコのようなチームと勝負するのだから。最後の局面で、もっと良いプレーを見たい。“高さ”と“色気”がこれからステップアップするためには課題になると思う。
試合前から話していたように、中盤の3枚を注目して見ていた。アンカーと呼ばれるポジションが、この試合は森重真人から細貝萌に代わっていた。細貝は良かったね。成長を感じた。前にチェックへ行っても強く、なおかつ後ろのことも考えてプレーをしていた。守備が洗練されてきている印象だ。彼があのポジションでしっかり守備をやれていたから、柴崎岳、香川という攻撃的な二人があの位置でも生きていた。もちろん、柴崎、香川も守備をそこそこやっていた。だから日本は試合を支配できた。
柴崎は、相変わらず淡々としながらも良いプレーをしていた。彼が高校生のとき、柏の練習に呼んで見ていたけれど、独特のキャラだね。燃えていないようで、燃えている。中田英寿ほどインテリジェンスがあるかはまだ分からないが、遠藤保仁のように淡々とプレーしている。代表に行って良くなって、鹿島に帰ってもそれを刺激にまた良くなって…と、良いサイクルに入っているように見える。今回のように点に絡めるようになると、さらに良い選手になっていく。
直前にメンバーが入れ替わってチャンスを得た選手もいる。CBも吉田麻也や昌子源という離脱者が出た中で、塩谷司が先発した。そういった選手たちは、今回のチャンスを生かしていたね。前線では、岡崎慎司をもっと長い時間見たかった。やっぱり、いいよね。日本に帰ってくるたびに良くなっている。武藤嘉紀にはもう少し期待していたが、あまり攻撃に顔を出せなかった。守備などボールがないところで頑張っていたのは確かだが…。前半は本田と柴崎のコンビに比べると、香川と武藤という二人の連係は見劣りした。
パスを回されたときにどうするか
次に対戦するブラジル代表の噂は、現地から少し伝わってくる。
「あんなFW(タルデリ)をなぜ代表に入れたんだ」とかね。パルメイラス、コリンチャンス、サンパウロが好きなファンからすれば、「もっとうまい選手がいるだろう」と思っているようだ。ブラジル国内にはもっとクラッキがいる。小さくてもうまくて速い、点の取れる選手がね。「残念だ」と言っていたよ。欧州に選手を売るために、身体能力がある程度あって、それなりにゴールを奪える選手を代表に入れているという面も今までにあったそうだ。
元川崎F、鹿島のジュニーニョのように、日本にも何人か来たような、小柄でうまい選手はまだまだいる。今度、探しに行こうかな(笑)。ブラジル戦はジャマイカ戦のようにいかないことは間違いないだろう。相手に速いテンポでボールを回されたときにどういう対応をするのか、そこに注目して見てみたい。
OMI’S RATING 小見 幸隆の辛口採点
GK 12 西川 周作
合格:GKは、ミスがゼロなら「ナイス」となる。フィールドプレーヤーのセンスがあるところも見せた
DF 5 長友 佑都
及第点:相手陣地に入った際のプレーはさすが。だが、失点を食らうかもしれないバックパスは危険だった
DF 16 塩谷 司
合格:前にボールを付けられるし、守備も弱くない。良いと思う。個人的にはSBでも見てみたい
DF 3 酒井 高徳
及第点:頑張ってはいたが、ミスも多いのは見逃せない。序盤に2回、スライディングが届かなかった
MF 13 細貝 萌
合格:成長を感じた。前に行っても強いし、後ろのことも考えられる。守備が洗練されてきている
MF 6 森重 真人
合格:空中戦も、地上戦も、1回も1対1で負けていない。地味なプレーに徹したが、それは大事なこと
MF 10 香川 真司
合格:惜しいミドルシュートを放った。あのポジションでは、シュートのアイディアから入って構わない
MF 7 柴崎 岳
合格:点に絡める選手というのを証明している。代表とチームでの関係も、良いサイクルに入っている
FW 9 岡崎 慎司
合格:CBからしたらイヤな動きをする。サイドよりも、真ん中で起用するのがいいのではと感じる
FW 4 本田 圭佑
及第点:絶好機を外したのはまずい。多くの選択肢もあった中だし、あのポジションで出るなら決めないと
FW 14 武藤 嘉紀
及第点:期待していたが、あまり攻撃に顔を出せなかった。香川との連係についても物足りない印象
DF 21 太田 宏介
及第点:短い時間だったけれど、クロスも良かったし、全体的にも悪くはなかった。長い時間で見てみたい
MF 22 田口 泰士
及第点:時間短く、評価なし
MF 19 小林 悠
及第点:左足のシュートは、ミートするところに集中がいき過ぎた。反省しただろうが、それが成長になる
FW 11 柿谷 曜一朗
及第点:途中出場や、先発してもハーフタイムまで。長い時間出れば、良いプレーを見せられるのだろうが…
監督ハビエル アギーレ
及第点:手ごたえがあっただろうけど、次はブラジルだ。香川が使えない位置の人選に注目したい
小見 幸隆(おみ・ゆきたか)
1952年12月15日生まれ。東京都出身。69年に読売クラブ(現・東京V)に入団してMFとして活躍。日本代表にも選出された。引退後は読売クラブ、V川崎のトップチームやユースチームの監督を歴任。06年より柏で強化に関わり、12年秋まで強化本部統括ダイレクターなどを務めた。