捨て身の富山も意に介せず。松本、4戦負けなし
均衡が破れたのは、流れがホーム側へと傾き始めた後半17分だった。良いリズムの今、何とか得点したいという場面で得たフリーキック。
反町監督の言葉を借りれば、富山はフリーキック時に「飯田と犬飼のダブルアイには95%マークを付けてくる」。事実、飯田と犬飼は、「自分のところにマークが付いていた」と振り返る。そこでキックの直前、飯田は、「表情が良くなったので、美味しいところを譲る」ために、場所の入れ替えを声掛けしたという。自身の元に向かってきた岩上の高精度のキックに、タイミングよく頭で合わせてゴールネットを揺らす。決勝点にこそならなかったものの、大事な一戦で大きな仕事をやってのけて見せた。
大久保は過去、広島・京都・徳島でJ1昇格の経験を持つ。今季、その経験をチームへと還元することを期待されて松本へ完全移籍を果たしたものの、序盤はコンディション不良もあり出遅れた。夏になって再び試合出場から遠ざかり、ここまでのリーグ戦出場は8試合にとどまっていた。しかし、「ネガティブな気持ちはなかった。自分が信頼を得られていなかったと考え、アピールしてきた」と、その時を見据えて虎視眈眈と準備を重ねてきた。10月に入ってから先発の座を掴むと、チームの4戦負けなしに大きく貢献。守備はもちろん、第36節・大分戦では、高精度のロングフィードで船山の2得点目をお膳立て。「常に攻撃の起点になることを考えながら、プレーしている」と語るように、3バックの中央が本職だが、4バックならSBとして攻撃にも関わることも好む。松本での初出場となった第16節・水戸戦では途中投入ながら1トップもこなし、「もっと長い時間やりたかったくらい」と笑みを見せたほどだ。
以前、「昇格のために必要となるモノとは?」という質問に対し、「長いシーズン、メンバーが替わることもある。その中で安定して成績を残すには全員の力が必要」と回答してくれた。――今、その言葉に強い説得力を感じる。(多岐 太宿)