9月に勝ちなしと足踏みした松本だったが、10月はこれで3勝1分とV字回復に成功。自動昇格となる2位確定へあと一つと王手をかけた。
松本は決して横綱相撲をしているわけではない。試合後に「俺たちはそんなに強いわけじゃないから」と、田中は苦笑したが、事実今節も富山の勢いの前に冷や汗をかく場面もあった。しかし、それでも着実に白星を積み重ね、地力では劣るはずの3位・磐田に『10』もの勝ち点差を付けている。
その理由を、敵将の安間監督はこう見る。「分かっていても点を取れる武器がある」。つまりセットプレーだ。この試合でも2得点はいずれもセットプレーの流れから。反町監督による分析、そして岩上という出し手と飯田、犬飼、そして大久保らエアバトルに強い受け手による阿吽の呼吸は、他チームの対策をはね除け結果を出し続けている。
そして、「昇格してからではなく、それまでの期間があるからこそ」(安間監督)。地域リーグに所属していた松本と、練習試合で対戦してきた甲府監督時代から、熱心に駆け付けるサポーターの姿は目にしてきた。抽象的ではあるが、ピッチ外の熱がピッチ内へと確実に伝播していることは、群馬の秋葉監督らも指摘している。結果を出すことで熱を生み、その熱がさらなる結果へとつながる?。松本は理想的なサイクルの中にある。
悲願が現実へと近付きつつあるここ最近、松本を取り巻くメディアの数は増加の一途を辿っている。3季担当を務めている筆者も、これがJ1へ昇格するということなのかと、どこか落ち着かない日々を迎えている。
しかし、百戦錬磨の反町監督は、「例えば、浮ついてチーム全員で福岡に移動するなんてことはしない」と周囲の熱に釘を刺す。
ただ、心配は不要だ。今季ここまでチームは、自分たちのスタイルを貫徹することで結果を残してきた。大切なモノは“平常心”であるということをよく知っている。残り4試合のいまになってそれを見失うことは、ない。(多岐 太宿)