Feature 特集

残留サバイバルの渦中にいる、5チームの現在地/残留争い特集

2014/10/31 12:24



残留争い5チームの危険度
 優勝争いよりも熾烈を極めていると言えるのが、今季の残留争い。残り4試合となった現時点で、13位の甲府から17位のC大阪まで勝ち点3差と間が詰まっている。12位の名古屋が勝ち点40ということを踏まえれば、残された3つの“残留の椅子”を5クラブで奪い合うことになりそうだ。この特集では、小見氏の解説とともに各番記者に4つのチェックポイントの評価をしてもらいつつ、現在の「5クラブの危険度」を計っていく。最下位・徳島の降格が決まり、J2に降格してしまうのはあと2クラブ。サバイバルから生存するのはどのクラブか。たった1試合で、順位が大きく入れ替わる可能性も秘めているだけに直接対決を多く残す17位のC大阪が、一つのカギを握りそうだ。

◆13位ヴァンフォーレ甲府

山本は、自らを中心に甲府に築いた伝統の良さに胸を張る


プロビンチアの強み
 甲府の“エース”を挙げるなら、それはクリスティアーノなのだろう。彼は先発落ちが続いていて、戦力としての貢献度が高いとは言えない。チームは中断明けから合流した阿部拓馬を中心に、“連係で崩す”スタイルに舵を切っている。とはいえ得点力不足は明らかで、その一因はエースの不発だ。

 被シュート数がJ1最少、完封試合数『12』という結果を見れば、守備は十分な成果を出している。序盤戦に苦しんだセットプレーの守備も徐々に改善し、いまではチームの強みとなっている。甲府がこの位置に踏み止まっている最大の要因は、堅固な守備にほかならない。

 城福監督は以前指揮を執っていたFC東京時代を含め、Jの監督としては6季目を迎える。昨季は決して手厚いとは言えぬ選手層ながら、残留争いを乗り越えた。となればライバルと比べて、監督の経験値がハンデになることはない。コーチ陣も含めた分析力と、短時間で選手に落とし込む戦術指導力が、相手の強みを消す守備を支えている。

 甲府は2011年、13年にJ1の残留争いを経験している。シビアな状況を“日常”として捉え、自信を失うことなくラスト4試合に臨めることも甲府の強みだ。互いを責め合う、憤りをぶつけ合うような刺々しさは一切ない。一体感はキャプテンの山本が「ウチのチームはほとんど全員が、“チームのためを思う選手”。そこはほかのチームより絶対上を行っている」と胸を張る、プロビンチアの強みだ。(大島 和人)

◆14位ベガルタ仙台

裏への飛び出しに特長、武藤は今季26試合出場4得点


ウイルソン離脱。武藤に期待
 第29節・名古屋戦でウイルソンが左ひざを負傷し、全治3〜4週間と診断された。今季は負傷に苦しんでいたとはいえ、過去2年連続13得点のエースであり、10月は上り調子だった。彼の負傷は痛手だ。ただし、2トップの相方である赤嶺は今季リーグ戦8得点と気を吐いており、ここに「裏に抜け出す自分の武器を出し、ゴールのために何度でも挑み続けたい」という武藤もエース候補として名乗りを上げたいところ。柳沢、中原、さらに27日の練習試合・山形戦で調子を上げたハモン・ロペスといった面々も加え、攻撃陣全員が奮起しなければならない。

 守備については、第26節・川崎F戦以降の、まず背後のスペースを消すことを優先させる守備の方針が奏功している。10月の反撃はこの守備力の高さに支えられたことは間違いないが、それではなぜこの欄が『◎』ではないのかというと、セットプレーの守備がまだ安定していないから。10月の4失点中3点を喫したリスタート時の甘さを排除し、『◎』の状態に持っていきたい。

 渡邉監督は指揮官としては初めての残留争いながら、選手時代やコーチ時代の経験を有する。先の経験が戦術面でも心理面でも与える影響は大きい。戦術の基本方針に手ごたえを得ていることに加え、それまで控えだった選手たちが練習試合・山形戦でモチベーションの高さをプレーに表し、心理面のタフさも期待させる。山形戦で活躍したDF渡辺も「前節に出番があったかないかにかかわらず、全員が前を向いていることが大事」と言葉に力を込めた。結束力で勝ち点をもぎ取り続けたい。(板垣 晴朗)

◆15位大宮アルディージャ

前々節を除き、リーグ戦全試合に出場中の家長は救世主となるか


大黒柱・家長は状態維持
 不動の中心選手・家長は前々節・横浜FM戦で累積警告により出場停止となった。その試合を2-3で落としてしまったことなどを考えれば、確かに彼の欠場は痛かった。だが、それまでリーグ戦全試合出場を続けていた大黒柱のリフレッシュという意味では、結果的に連戦を避けることになったことは大きい。強靭な肉体を持つ家長とはいえ、蓄積してきた疲労は過小評価できない。結果的に10月はミッドウィークの試合を回避する形になり、良い意味でこれまでどおりの状態を維持している。“守備の固さ”は、渋谷監督が就任早々から取り組んできた課題だ。それが一定の成果を挙げたことで勝ち点を積み上げた一方、渋谷監督の戦術をよく知るボランチ・金澤の離脱もあって、ここに来て若干のほころびを見せ始めている。直近の2試合で5失点という数字は、残留争いを戦う上ではやや心許ない。指揮官の修正能力が問われるが、大宮と甲府でコーチとして数多の残留争いを経験してきた渋谷監督だけに、こういった状況での引き出しは持っている。理想を目指すだけの余裕がない中で、どのような取捨選択をするのかが今後の命運を左右するはずだ。

 一気に勝ち点を積み上げたここ2カ月間の戦いで、チームの一体感は急速に増している。誰からともなく「一戦必勝」という言葉が聞こえるようになり、全員が同じ方向を向けるようになってきた。一抹の不安が残るとすれば、2試合続いた逆転負けによる精神面でのダメージか。勢いを持って残り4試合を駆け抜けるためにも、自信の喪失だけは避けたいところだ。(片村 光博)

◆16位清水エスパルス

ノヴァコウィッチも特別扱いしない、大榎監督のポリシーは固い


1点勝負に危険な匂い
 エースのノヴァコヴィッチは合格点の今季11得点も、大前は6得点、高木俊は3得点とアタッカー陣の得点力は物足りない。長沢の欠場が大きいが、その穴を埋める選手が現れなかった。

 守備はウィークポイントの一つに挙げられる。一時期駒不足から3バックにして両翼を下げる5バックにするも、なかなかうまくハマらなかった。その理由は、「守り切ろうと意識が強くなり過ぎる」(大榎監督)ということ。けが人の復帰とともに3バックから4バックに戻し、失点は減りつつあるが、1点勝負となるとまだまだ危険な匂いを残す。

 チームを指揮する大榎監督は、プロ監督の経験としてはまだ3カ月ほど。ただ、独裁型の監督ではなく、周囲の話を聞くことのできる監督である。大榎体制誕生後、ヘッドコーチへと昇格した内田一夫コーチは、監督として甲府を10年にJ1に昇格させるなど経験豊富。また、選手の話にも熱心に耳を傾ける。最終的な決断は監督本人が行うが、さまざまな意見を集め経験を補う。

 その大榎監督最大の魅力は、チームをまとめる力だろう。崩壊寸前だったチームを瞬時に束ねた。これまでノヴァコヴィッチら外国籍選手は野放しになっている状況が続いていたが、大榎監督は全員の前でノヴァコヴィッチに対しても叱責するなど、特別扱いはしない。発言にも一貫性が見られ、一つひとつに重みのある言葉で信頼関係を築けているようだ。

 けが人も復帰しつつあり、これから状態は尻上がりに良くなるだろう。(田中 芳樹)

◆17位セレッソ大阪

韓国代表がゴールを守り、守備は一定の安定感


大量失点の心配はないが…
 現在、チーム最多得点(7点)のフォルランは内転筋痛のため、復帰と離脱を繰り返している。今後も戦力として計算には入れづらく、大熊監督の戦術とのかみ合わせも良くないため、エースの項目は『△』とせざるを得ない。ただし、8月に合流したカカウがリーグ戦9試合3得点と気を吐き、杉本や南野といった大熊監督のC大阪U-18時代の教え子も一定のキレは維持している。一人で21得点を挙げた昨季の柿谷(現・バーゼル)のような絶対的エースはいなくとも、永井や楠神も含めた総力で、残り4試合を乗り切る。守備については、残留争いの当該5チームの中では甲府に次いで失点は少なく、韓国代表GKのキム・ジンヒョンを中心に大量失点は考えにくい。安定感は保っており、得失点差の争いになれば、俄然、有利になる。

 残留争いはおろか、トップチームを率いることも初めての大熊監督にとって、経験値の少なさは否めない。ただし、05、06年にはトップチームのコーチ経験があり、以降も10年からはU-18の監督としてC大阪に携わっている。チームを熟知しているという点は強みで、就任後、状態は緩やかに上向いている。指揮官の求心力に伴い、一体感も損なわれておらず、監督自身も「選手はよくやってくれている。感謝している」と事あるごとに話している。9月末に一度は復帰した山口主将が再離脱し、今季絶望となる不測の事態にも見舞われたが、ゲーム主将を引き継いだ山下がチームをまとめ、残留請負人であるカカウが「団結」を訴えるなど、“一丸の姿勢”は保たれている。(小田 尚史)

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