あれほど熱い“モリさん”を初めて見た。71分に山本が成功させた、甲府の決勝PKの直前のことである。189センチの巨体に似合わず温厚で、白髪まじりの風貌には好々爺の風格すら漂う38歳の盛田が、右手を振り上げて甲府のサポーターを煽った。
「それくらい、気持ちを入れた試合だったし、盛り上げてもいいかなと思って…」(盛田)という、大一番だからこその感情表現だった。
この日最大の仕事は62分の同点弾だった。36歳の石原が右サイドから上げたFKに反応し、体勢を崩しながらヘッドを合わせる。GKキム・ジンヒョンの頭上を破る、今季5点目だった。
「まぐれです。GKが出て来ていないなと思って、チョンと当てたら入っていました。なんかもう、本当に、当てただけなんですけど…」と盛田。試合後はいつものシャイな彼に戻っていた。
監督が「ゴールは期待していない」と言い切るFWは、J1の中でも盛田だけではないだろうか? FWをお役御免にされてCBに転向し、今季は9年ぶりに前線へ戻ったばかり。城福監督が期待しているのは盛田のキープ力であり、的確な配球能力だ。
しかしそんな草食系FWが、この8試合ぶりのゴールで今季5点目を記録。これは16年の選手生活の中で、J2時代も含めて最多となるシーズンゴール数だ。チーム内でも、クリスティアーノと並ぶ“稼ぎ頭”になっている。「ベスト・オブ・ザ・ベストを見せ続けることでようやくほかと対等に戦える」(城福監督)というプロビンチアにとって、まさにサッカー人生の“ベスト・オブ・ザ・ベスト”を見せているのが“モリさん”だ。(大島 和人)
盛田 剛平(もりた・こうへい)
1976年7月13日生まれ、38歳。愛知県出身。189cm/86kg。桐蔭学園高→駒澤大→浦和→C大阪→浦和→川崎F→浦和→大宮→広島→大宮→広島を経て一昨季、甲府に加入。J1通算150出場8得点。J2通算115試合出場8得点。