百戦錬磨の背番号7が決勝で心懸けたいポイントを「気負わないこと」(遠藤)と語る中で、あえて逆の方向に突き進もうとするのが宇佐美である。
「僕が決めればチームが勝てるというぐらいの意気込みを持ちたいし、それぐらい気負ってもいい」
22歳の和製エースがあえてこう言い切るのには訳がある。ナビスコカップ決勝に先だって行われたJ1第31節・仙台戦(1△1)で後半に2本のシュートがバーとポストに嫌われ、無得点に終わった宇佐美は終了間際に痛恨の同点弾を許したドロー劇の責任を一身に背負おうとしていた。
「自分があらためて大事なところで決めないといけないと感じた」(宇佐美)。そう殊勝に語る背番号39だが、リーグ戦の猛追同様に、ナビスコカップの快進撃もこの男なくしてあり得なかった。
代表組が不在だった予選リーグのFC東京戦のゴールに始まり、自らがくじを引いた準々決勝の神戸戦ではホームとアウェイの双方で“神戸キラー”ぶりを発揮。川崎Fを相手にした準決勝でも第1戦には貴重な2点目を叩き出している。
6試合で5得点―。自らがエースとして勝ち獲る初の優勝に燃えている宇佐美は「決勝でも点を取って勝てれば、完全に自分の大会だと印象付けられる。ここまで来たからには勝たないと意味がない」と自らが書き綴ってきたストーリーをハッピーエンドで締めくくる覚悟である。
現在公式戦では5試合ノーゴールに終わっている宇佐美にとって、ナビスコカップの決勝戦が持つ重要性は自覚済みだ。
「僕にとってもチームにとってもこの試合は今季の分岐点。点が取れていないけど、自分にプレッシャーを掛ければ乗り越えられる。逆にこのタイミングで試合が来てくれるのはありがたい」。
連戦の肉体的な疲労とエースとして経験する初の優勝争いによる重圧も足かせとなって、一時は確かに宇佐美らしからぬプレーも続いていたが、強気なドリブル突破を再三試みたFC東京戦と、持ち味の強烈なシュートをバーとポストに蹴り当てた仙台戦を見る限り、調子は確実に上向きだ。
そんな背番号39はいま、静かに決戦のときを待つ。狙うのは07年に安田理大(現・鳥栖)が果たしたニューヒーロー賞とMVPの独占だ。「MVPは意識していない。僕が点を取らなくてもチームが勝てばいい」(宇佐美)。表面上はフォアザチームを装うものの、本音は「一番前で自由にやらせてもらっているぶん、チームを勝たせる責任がある」。
宇佐美の、宇佐美による、宇佐美のための大会―。2014年大会をそう印象付けるために必要なのは、埼玉スタジアムでの爆発だ。(下薗 昌記)