■浦和レッズ
必要以上の力みはない。楽しむことで、望みの結果を手にする
1991-92シーズンの欧州チャンピオンズカップ(現・欧州CL)決勝、バルセロナのヨハン・クライフ監督はサンプドリアとの決戦に向かう選手たちにロッカールームでこう声を掛けたという。「最高の舞台を楽しんでこい」。
それはおそらく、やるべき準備はしてきたことやそこまで辿り着いた自信、そして「楽しむ」ことが力を最大限に発揮できると信じていたからこその言葉だったのだろう。いまの浦和もまさにその状態、境地に達していると言える。当然ながら決戦に向けて徐々に練習のテンションや緊張感は高まっているが、必要以上の力みは感じられない。
那須は「アウェイの前節・仙台戦(1△1)で一つの壁を乗り越えた」としつつ、あくまで意識的にではなく自然に「楽しまないと損だと思えるようになった」と言い、梅崎も「満員のスタジアムで優勝を懸けた試合ができるのは選手冥利に尽きるし、その舞台を楽しむだけ」とした。
戦術面では練習を見る限り、相手SBの裏を狙うことやコンパクトにしてラインを高くすることを意識しているようだが、おおまかには普段どおりのメニューが続く。19日の練習では、横パスが続くとペトロヴィッチ監督がゲームを止め、縦パスを入れることを強い口調で求めた。宇賀神は「ミーティングでミシャも言っていたけど、ボールを持ったときに恐れる気持ちや、大事な試合だからと言って慎重になり過ぎることが良くない」と説明したが、それも普段どおりに戦うということ。過去の積み重ねの結果、現在の位置にいる。いまの姿のままでいられれば、結果を出せるという自信がある。
「なかなか、心底楽しむことはできない」(那須)かもしれない。それでも、浦和の選手たちは“最高の舞台”を楽しめるか。楽しむことで普段の戦いができれば、その先に望んだ結末が待っているはずだ。待っているはずだ。(菊地 正典)
■ガンバ大阪
パトリックも軽傷。ベストなメンバーで臨める、2週間後の“決勝戦”
2週間前の8日、広島とのナビスコカップ決勝戦を3-2で制したチームは、同じ舞台で今季二度目の“決勝戦”に挑む。勝てば逆転優勝に望みをつなぐ一方、敗れれば宿敵の胴上げを見せ付けられることになる大一番。遠藤は言う。「どちらにもプレッシャーはかかる一戦。僕らはそれをいいように捉え、アグレッシブにプレーしたい」。
ナビスコカップに先だったリーグ戦前節の仙台戦は後半ロスタイムに同点弾を許し、浦和との勝ち点差は『5』と再び広がったものの、チームはナビスコカップの優勝で完全に息を吹き返した。
「16位から上がってきたので失うモノが何もない」(長谷川監督)。リーグ戦の再開を降格圏で迎えたチームにとって、優勝どころか、ACL圏も遠い目標だった。それでも、あくまでも先を見ずに歩みを進めてきた結果が2位浮上につながった。
仙台戦のつまづきは確かに痛手だ。とはいえ、9月に阿部は「浦和と直接対決するまでに5差ぐらいに縮めていられたら」と希望的な観測。G大阪が猛追し、浦和が失速したからこそ、リーグ戦終盤でのデッドヒートが実現したのである。
連戦となる遠藤と今野の両代表選手も過度の疲労感はなく、右ひざを痛めて一時別メニュー調整だったパトリックも満を持して浦和戦に挑める状況だ。戦力的には現有のベストを投入できるG大阪。中盤の構成をどうするが唯一の不透明要素だが、「勝たなければチャンスはない」と指揮官は強気な言葉を口にする。
いかなる布陣であろうと、やはりカギを握るのは06年の最終節で浦和に苦杯をなめた経験を持つ遠藤だ。
「負けて相手の優勝が決まる試合は誰もが経験したくない」。浦和戦でチーム最多の通算6得点を誇る「浦和キラー」が点を決めた試合は5勝1分けだ。
1シーズン制ならではの醍醐味が凝縮した大一番は、間違いなくJの歴史に刻み込まれることになる。(下薗 昌記)