クラブに多くのタイトルをもたらした偉大な監督が、日立台でホーム側のベンチに座ることは、今節が最後になるのだろう。09年の途中から柏の監督に就任すると、その年はJ2への降格をまぬがれなかったものの、翌年にはJ2を制しJ1へ復帰。そこからは、昇格1年目のJ1優勝に加え、天皇杯、ナビスコ杯と3年連続で主要タイトルを獲得してきた。
毎年クラブのスローガンには「VITORIA(勝利)」を掲げ続け、その言葉どおり“勝者・柏”の礎を築き上げた功績は計り知れないほど大きい。「ブラジル人らしい激情家の面はあるけれど、すごく真面目で誠実」(公文栄次通訳)な指揮官に率いられたチームは、今季もスルガ銀行チャンピオンシップを制し、リーグ戦とナビスコカップでは上位の成績を残している。だが9月、クラブは今季限りでのネルシーニョ監督の退任を発表した。
そして迎える、ホーム最終戦。「あまり気合いが入り過ぎてしまっても良くないと思う」と渡部は気負いを警戒するが、5連勝を達成して大きくしたACL圏入りの可能性を、ここで消すことはネルシーニョイズムが許さないはずだ。監督とともにチームをけん引してきた大谷も「自分たちが目指しているモノ(ACLの出場権獲得)を達成したい。結果がすべてだと思う。二つ勝って、ほかの(上位)チームの結果を待つ」と決意を語る。
「Old soldiers n ever die, they just fade away(老兵は死なず、ただ消え去るのみ)」。ネルシーニョ監督は、今季を最後に5年半にわたり指揮を執ってきた柏から去っていく。しかし、老練なブラジル人が伝えてきた精神は、選手やクラブの中で生き続けるだろう。今節は、そのことを証明する戦いでもある。(石原 遼一)