9年ぶりのJ1優勝に王手をかけたG大阪。超が付くほど攻撃的だったスタイルは守備をベースにする堅実なスタイルに変わったチームにあって、唯一変わらないモノがある。
G大阪をG大阪たらしめる唯一の男、遠藤保仁の存在だ。先発メンバーではただ一人、リーグ戦の頂点に上り詰めた経験を持つ背番号7は、エベレスト登頂におけるシェルパのような存在だ。
「まったく今週の雰囲気は変わらない」。熱血漢の丹羽やクールな阿部も大一番を前にしたチームの雰囲気については、同じ言葉を口にした。しかし、その中心にいるのが独特のキャプテンシーを発揮している背番号7である。
「開幕戦もシーズン途中の試合も、優勝が懸かった試合も何の違いもない。リーグ戦は34分の1の積み重ねなので」。当たり前の言葉を口にしても、一切の違和感や取り繕った感がないのはひとえに遠藤という百戦錬磨の強者の実績が裏打ちしているからだろう。
「僕は特に何もすることはない」。表面上はクールを装う背番号7だが、チームが苦境に立ったときや、進路を見失いかけたときに、ピッチ内の誰もが遠藤を道標にする。
今季一冠目となったナビスコカップの決勝でも2点をリードされた瞬間に、身振りを交えながら発した「大丈夫」という言葉が、動揺する仲間たちの心を落ち着かせた。
05年の優勝時にはアラウージョや宮本恒靖らの影に隠れる恰好でおよそチームをけん引する立場になかった遠藤だが、いまや堂々たるキャプテンである。
「一応キャプテンを任されているので、監督の期待にも応えたい」(遠藤)。
「一応」などと謙遜するものの、最近発する言葉はかつてなかった自覚と勝利への執念に満ちあふれている。ナビスコカップ決勝の前日会見では「勝つために全力でハードワークする」と短い言葉に意気込みを込めてみせたが、徳島戦を目前にして、やはり「全力でハードワークして戦う」と力強い言葉が飛び出した。
「ここまでやってきたことを全員でまたやりたい」(遠藤)。マイペースなキャプテンに率いられた大阪の雄は、気負いも、焦りも、そして力みもなく、“34分の1”に臨む。(下薗 昌記)