明暗分ける“プラス1”。その要因に成長した櫛引
「点を取りにいくということを選手に伝えた」と大榎監督は試合前の様子を語っていたが、そのようなプラン通りにはならなかった。清水は前半シュートゼロ本。プレッシャーのためか動きにキレが見られず、また積極的な姿勢もなかなか出せなかった。
しかし、ただ一人と言っていいほど、重圧とは無縁であるかのようなプレーをしている選手がいた。今季から背番号1を背負うGK櫛引だ。リーグ戦では29試合に出場。開幕から先発を続けていたが、パフォーマンスが安定しない時期もあり、中盤戦では先発落ちも経験した。後半戦に入るとようやく定位置を取り戻すも、天皇杯準決勝・G大阪戦(2●5)という大舞台ではミスを繰り返した。その後の影響が心配されたが、大榎監督は「彼と心中する」とキッパリと言い切って直後のリーグ戦でも使い続け、起用に応えるように櫛引は調子を取り戻しつつあった。
後半、甲府の怒とうの攻めに遭ったが、指揮官は「『櫛引お願いします』という神頼み的な部分もあった」と、この試合を櫛引に託していた。その思いが届いたのか、櫛引は最後まで集中力を切らさなかった。「監督が使い続けてくれているので、結果を出さなければ」(櫛引)という意気込みが、ゴール前での振る舞いをまさに守護“神”にふさわしいモノとしていた。難しいボールをセーブするのはもちろん、相手のシュートを自らの正面に引き寄せる何かを持っていた。
清水はこの試合を引き分けに持ち込み、勝ち点1を獲得。終わってみれば、16位・大宮との勝ち点差はこの『1』のみ。しかし、その『1』をプラスできたのは、これまで心もとなかった守備陣、特に櫛引が成長を示したからこそだった。(田中 芳樹)