悔しさも過ちも、“神戸らしさ”の糧にしろ
84分、左サイドで速攻に持ち込んだ川崎Fは、レナトがドリブルで縦に抜け出す。それに対応したのは高橋だ。決してスピードでは負けていない。ただ、並走状態から抜け出せない。ペナルティーエリア内でタックルした。ジャッジはファウル。一発退場だった。試合後、高橋は開口一番、敗戦の責を口にした。「誰が見ても間違いなく僕の退場で試合が終わった」。献上したPKは、大久保のこの日2発目となる古巣への恩返し弾に変わった。
試合前日、小川は最終節への意気込みをこう話していた。「泥臭く、ですよね」。森岡も同様だった。「内容にはこだわらない。勝って終わりたい」。その気持ちは序盤からピッチにあふれた。その象徴がハイプレス。走力や運動量を必要とする守備戦術を遂行し、「外されても2度追い、3度追いする」(徳重)ことに執着心を持った。川崎Fの巧みなポゼッションは、神戸のプレスを何度もかいくぐる。ただ、選手たちは外されても即座にポジションに戻った。体現したのは“神戸らしさ”が詰まったハードワーク。だが、神戸に勝利の凱歌は訪れなかった。
退場した高橋だが、この日は尽きないランやパスで何度も魅せた。敗戦の責を一身に背負ったが、ピッチを去る背番号2に、労いの拍手を贈ったのは誰であろう、今季限りで退任する安達監督だ。指揮官は試合後、選手たちを誇らしげに評価した。「選手たちはファイトした」。高橋はこうも付け加えている。「この悔しさ、過ちを忘れず、次につなげなければいけない」。タイトルを目指した2014年、「本気」(安達監督)の戦いに没頭した安達ヴィッセルの挑戦は、夢の道筋を指し示し、静かに幕を引いた。(小野 慶太)