2015年アジア杯(オーストラリア)で優勝候補に挙げられているホスト国・オーストラリアや韓国が次々とベスト4入りを果たした。前回王者の日本としても、準々決勝でUAEに敗れ去るわけにはいかない。23日のシドニー、スタジアム・オーストラリアでの大一番では、確実に勝利を手にする必要があった。
この日の現地は真夏の太陽が照り付けた。陽が落ちて少し涼しくなったものの、20時半の気温は26度、湿度が70%。20日のヨルダン戦(メルボルン)から3日しか経過していない選手たちには非常に過酷な気象条件だが、それを乗り越えるタフさが求められるところ。この日は交代選手も含めて総力戦で挑まなければならなかった。
ハビエル・アギーレ監督が送り出したスタメンはこれまで3試合と全く同じ。GK川島永嗣(スタンダール・リエージュ)、DF(右から)酒井高徳(シュツットガルト)、吉田麻也(サウザンプトン)、森重真人(FC東京)、長友佑都(インテル)、アンカーに長谷部誠(フランクフルト)、右インサイドハーフ・遠藤保仁(G大阪)、左インサイドハーフ・香川真司(ドルトムント)、右FWに本田、左FWに乾貴士(フランクフルト)、トップに岡崎慎司(マインツ)の[4-3-3]だ。前の試合で顔面負傷した森重は強行先発。30代の遠藤、長谷部の消耗度も気になるところだ。試合展開によっては120分+PK戦もありえるだけに、日本としては合理的な試合運びを見せたかった。対するUAEは[4-2-2]。やはり注目は右MFのオマール・アブドゥルラフマン(10番)とFWのアハマド・ハリル(11番)だ。
不気味さを漂わせる相手だけに、日本としては早い時間帯の先制点が欲しかったこの試合。開始早々に乾が思い切りのいいシュートを放ち、右CKから岡崎がニアに飛び込むなど、日本の積極性が感じられた。が、やはり疲労は隠せず、全体の動きが悪い。不用意なボールの失い方が多く、相手にスキを与えてしまう。それが如実に表れたのが開始7分のUAEの先制点の場面。右サイドからのフィードにマブフート(7番)が抜け出し、森重のスキを突いた。吉田のカバーリングも遅れ、彼の強烈右足シュートはゴール左隅へ。川島も反応しきれず、日本は今大会初の失点を喫してしまった。
それでも早い時間帯だけに、まだ時間的余裕は十分にあった。日本はじっくり相手を攻略したかったが、やはり動きが重く、インテンシティーの高い試合運びができない。右サイドをかわした酒井高徳のクロスにファーサイドの乾が抜け出しヘッドを放った18分の決定機もGK正面に飛び、右サイドでボールを奪った本田が中に切れ込んで左足で打ったシュートがサイドネットを強襲した44分のビッグチャンスも決まらない。ここまで3試合は左で崩して右の本田という決めパターンがあったのだが、この日はその形も作れない。前半のうちから前線と最終ラインが間延びし、相手にスペースを与えがちな状況も目立ち、前半の日本は明らかに精彩を欠いた。
このまま負けるわけにはいかない日本。アギーレ監督としても動かざるを得ない。後半開始から乾に代えて武藤嘉紀(FC東京)を投入。その武藤が7分、中盤から思い切りのいいミドルを放ち、流れを変えようと試みる。さらに指揮官は9分に遠藤と柴崎岳(鹿島)を交代。もう一段階のテコ入れを図る。その柴崎が出場直後はインサイドハーフでやや消極的になり、香川のゲームメークの負担が増え、少しバランスが崩れたように思われた。が、15分には香川が岡崎の落としを受けてGKと1対1になる決定機を迎える。ヨルダン戦でようやくゴールを決めた彼には連続得点を奪ってほしかったが、惜しくもGKに弾かれてしまった。
得点が奪えないと見た指揮官は、後半20分に岡崎と豊田陽平(鳥栖)を交代。早くも3枚目のカードを切って勝負に出る。その時間帯から日本は両サイドからのCKをたびたび手にするが、決め手を欠いてゴールが遠い。本田がお膳立てに回る時間帯が増えたことで前線も迫力を出し切れない。酒井高徳→柴崎→豊田をつながって打点の高いヘッドを放った30分の決定機も枠を超えて行った。
残り時間は刻一刻と過ぎていき、日本選手たちは焦りを募らせていく。グループリーグから見られた決定力不足はこの日も顕著で、相手が自陣を固めてきたこともあって、崩しの形も大幅に減ってしまった。立ち上がりに奪われた1点が重くのしかかり、日本は絶体絶命の窮地に追い込まれた。
そんな後半36分、アギーレ監督の采配がとうとう的中する。左サイドからパスを受けた柴崎が本田とのワンツーからペナルティエリアやや外側から右足シュート。豪快に枠を揺らし、起死回生の1点を叩き込む。22歳の若きMFの一発が生まれ、長谷部や本田、香川らが彼に抱きついて喜びを爆発させた。
何とか1-1に追いついた日本は勢いを吹き返し、終盤は一方的に攻め立てた。香川と長谷部が立て続けに打ったシュートをGKに防がれた41分の決定機、本田の右クロスに豊田が抜け出した44分のビッグチャンス、さらには後半ロスタイムに本田→柴崎→武藤→香川とつながってゴール前でフリーで右足シュートをを打った得点機と、相手を仕留められるチャンスは何度もあったのだが、どうしても2点目が入らない。結局、試合は日本が避けたかった延長戦へともつれ込んだ。
後半ラストの時間帯のように相手を押し込みたかった日本だが、やはり疲労感は色濃く、セカンドボールを拾えない。逆に相手にカウンターをしかけられて危ない場面を作られる。前半の15分間は瞬く間に終わってしまった。アギーレ監督が激しい身振り手振りで指示を送った後半は、右脚のアクシデントで走れなくなった長友をインサイドハーフに上げて香川とコンビを組ませ、右SBに柴崎、左SBに酒井高徳という並びに変える大胆策を採り、勝負を決めに行った。その采配の効果か、開始早々に3回連続CKとFKのチャンスがあったが、これもまた1つ精度が足りない。残り3分というところで好位置で得たFKも柴崎のキックがボール1つ分外へそれてしまう。この日の日本は2点目が遠かった。
1-1のまま決着がつかず、とうとうPK戦に突入。守護神・川島の読みに期待が懸かった。ところが1番目の本田がまさかのミス。相手も3番手がミスしてサドンデス突入も、6人目の香川のPKは左ポストを直撃し、外れてしまう。相手は6人目が確実に決め、UAEが5-4で勝利。日本は96年UAE大会以来の8強止まりに終わった。2014年ブラジルワールドカップ惨敗後のビッグトーナメントでこの結果はショックが大きく、今後の日本代表を取り巻く状況はあまりにも険しい。いち早く打開策を考えることが肝要だ。(元川 悦子)