ウォーミングアップの列の先頭に比嘉がいる。一緒に走る篠田洋介フィジカルコーチに笑いながら話しかけると、コーチはすかさず切り返す。次の瞬間、中澤や中村といった重鎮たちも呼応し、チーム全体に笑みが広がる。仕掛け人である比嘉が作り出す良好な雰囲気。まさしくムードメーカーの働きだ。
2年前は当たり前だったこのような光景だが、比嘉が京都に期限付き移籍していた昨季はなかった。比嘉の真似は誰にもできず、似たようなことを言っても同じ空気にはならない。篠田フィジカルコーチは「ふざけているわけではありません。自然な笑いは疲労をやわらげる効果があります」と歓迎している。
チームにとって比嘉という存在が与える影響は大きい。しかしながら本人のためには必要な期限付き移籍だった。横浜FMでは公式戦出場の機会がなかったのだから、出場機会を求めるのはプロサッカー選手として当然だ。
京都では開幕から先発の座を射止めたが、負傷や監督交代などもあって年間18試合の出場にとどまった。決して多い数字ではないが「本当の意味でチームの一員に加われた。個人的にも球際の強さや勢いを取り戻すことができた」と手ごたえを口にする。
沖縄キャンプでは出身地である沖縄のファンと地元メディアから特別な視線を浴びたが、横浜に帰ってからも注目される存在にならなければ意味がない。「選手生命を懸けて頑張る」という言葉は本気だ。比嘉はムードメーカーで終わるつもりなど毛頭ない。