ブラジルW杯での惨敗から協会が次の指揮官に求めたのは、厳しい状況下に対応していく力をチームに植え付けることだった。ハビエル・アギーレは主にメキシコ代表とスペインのクラブで結果を出したが、多くの場合は火中の栗を拾うような形でチームを率い、そこからチームを引き上げた。日本が世界と戦う上での勝負強さを身に付ける意味で、確かに適任だった。
“コンプロミッソ(責務)”を掲げて、スタイルにこだわるよりも試合に勝利するサッカーを実現していくことを約束したアギーレだったが、アジア杯前にあった6試合のうち、4試合は[4-3-3]というベースのシステムと基本的な狙いを選手に伝え、あとは強化というより選手の見極めに使った。状況判断や慣れない環境の中で実力を発揮できるかを見極めようとしていたのだ。代表経験の少ない選手を中心に先発メンバーを組んだ4試合目のブラジル戦は、彼らにとってのテストであり、アギーレにとってはフレッシュな選手の適応力を見る恰好の機会だったが、結果は何もできずに惨敗。アギーレ監督は経験が豊富で、しっかり状況判断できる選手たちにベース上の自由を与えることを選択した。
遠藤保仁、今野泰幸、内田篤人(アジア杯は辞退)、さらにけがから復帰の長谷部誠に、ブラジルW杯はメンバー外ながらザックジャパンで代表を経験した乾貴士と豊田陽平を呼び寄せたアギーレ監督はホンジュラス戦と豪州戦で手ごたえをつかむと、先発メンバーを完全に固定してアジア杯に臨むことを選択した。筆者にとって意外だったのは対戦相手の情報を当日のミーティングまでチームと共有しなかったこと。そこで要点だけ伝え、あとは試合の中で選手が感じて対応していく。「経験豊富な選手たちの判断を奪いたくない」というアギーレの方針は合宿を通じてチームに浸透しており、選手たちも好意的に受け止めて取り組んでいた。
ある意味で細かく指導する“管理”のザッケローニから選手の判断を尊重する“放任”のアギーレに方向転換する形となったが、昨年のブラジルW杯と今回のアジア杯で同じメンバー固定の傾向が出て、結果として選手の疲労や戦術的なバリエーションの不足を招いたことは皮肉だ。どちらの方法を取るにしても、チーム力を高く維持するには国際経験が豊富な主力で熟成させるのが効果的だということだが、競争力を失わせることにもなる。
試合中の対応力は主力の中ではバージョンアップしたが、メンバー全体の底上げという課題を残した。新しい選手の発掘も重要だが、発掘した選手を戦力として組み込んで初めて成果となる。おそらくアギーレ監督の中でも次のプランはあったはずで、それを見られずに解任となったのは残念だが、次の監督がどういうスタイルであれ、この課題は引き継がれるべきものだ。(河治 良幸)