Feature 特集

[日本代表]契約解除という選択。短命に終わったアギーレ体制

2015/2/6 16:01



叫ばれる協会の任命責任。だからこそ冷静に

あっけない終幕

 長引いた騒動は、突然の会見とともにあっけなく終幕が下りた。

「アギーレ監督との契約を解除いたします」

 日本サッカー協会・大仁邦彌会長の伏し目がちな表情が、その無念さを印象付けた。

 昨年8月に日本代表の新指揮官に就任したハビエル・アギーレ監督。その身に疑惑が降りかかったのは9月のことだった。それは、スポーツの世界で最も嫌忌されるモノ、“八百長”に関する疑いだった。 以降、代表活動のかたわらで、この話題は徐々に膨張していく。12月末にはアギーレ監督が騒動を収めるべく会見をするも効果なし。そして今年1月に入ってスペイン検察の告発が裁判所に受理されたという報道がアジア杯期間中に飛び出ると、騒動の沸点はピークに。結局、今回正式に受理されたことを確認した協会は、アギーレ監督を解任。短命体制の終わりを見た。

 いま、世間やメディアで日本サッカー協会の任命責任が叫ばれている。重大な役職の人物が不祥事等で責務を放棄せざるを得ない場合、結果論であったとしても、その人物を選任した者への責任が追求されるのは、組織論としては当然の成り行きだと言える。 しかし冷静に振り返ると、今回はそれだけではない側面も存在している。

なぜ、アギーレだったのか

 大仁会長、そして実際にアギーレ招聘に直接関わった原博実専務理事(当時は技術委員長も兼任)と霜田正浩技術委員長はそろって「交渉の時点では(疑惑は)分かり得なかった」といった旨のコメントを述べている。結果としてこうした疑惑が生じてしまい、調査不足を指摘されても仕方がない。ただ、アギーレは協会が10年の南アフリカW杯が終わった直後にも招聘に動いた人物だ。当時は交渉が決裂したが、言ってみれば4年越しに日本が再ラブコールを送った“待ち人”だったのである。

 その理由として挙げられるのが、代表とクラブ両方での国際舞台の経験値だった。

 アルベルト・ザッケローニ元監督、並びにアギーレ前監督に支払われた年俸は2億円台と言われている。これは欧州を中心にしたサッカー界では、決して高給取りの域には入らない。現在、トップリーグや強豪国で指揮をとる人気監督たちは、この数倍も高いサラリーを手にしている。残念ながら、とても日本が金銭交渉で太刀打ちできる世界ではないのが実情だ。

 そんな中、アギーレは協会にとっては“絶妙な着地点”に存在していた監督だった。つまり、メキシコ代表やスペインの各クラブで手腕を発揮した実績を持ち、なおかつそれほど高額でもない。いま、日本が現実的に世界的な指揮官を招聘する上で、適した条件を持つ人間――。これは紛れもない事実だった。

 繰り返しになるが、任命責任が問われるのは仕方がない。ただし、協会への批判の空気が充満する中、アギーレ招へいの是非を今回の一件だけで“非”一色に塗り替えてしまうのはあまりにも安直過ぎる。

 白髪のメキシコ人が監督になったのには、現実的かつまっとうな理由があった。日本サッカーが無念にかられるいまだからこそ、ここで記しておきたい。(西川 結城)

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