
全北現代のFWイ・ジェスン(17番)のシュートを防ぐ鈴木と増嶋。守備の集中力は途切れなかった
全北現代0-0柏
「まるで負けたような感じ」と敵将に言わしめた、理に適った柏の現実策
タイムアップの笛が鳴った瞬間、頭を抱え、地面にしゃがみ込んだのは全北現代側だった。韓国代表をW杯本大会に導いた名将チェ・ガンヒは「まるで負けたような感じがする」とうめく。相手だけでなく味方すら欺くような、意外性のある戦いで、柏はKリーグ王者から勝ち点をもぎ取った。
吉田監督はアカデミーを指導していたころから使い続けてきた[4-1-4-1]の布陣を[3-4-3]に変更した。ネルシーニョ監督時代に慣れ親しんだ形に近いとはいえ、新監督になってから「11対11でやったのは今日が初めて」(吉田監督)という、ぶっつけ本番だった。
指揮官は「まず高さに対応しなければならなかった」とその狙いを口にする。CBに186㎝のエドゥアルドを配置し、空中戦が互角になった。また全北現代はハン・ギョウォン、エニーニョの両サイドに破壊力があり、そこに対して「寄せ、アプローチの時間を短縮したかった」(吉田監督)という意図もあったという。さらに全北現代は今季まだ公式戦を戦っておらず、分析するための材料が少なかった。ピッチには凹凸が多く、パスの精度も上がりにくい。これだけの難しい条件がそろえば、保守的に戦略を組み立てることは、確かに妥当だ。
しかし前線が薄くなったことでパスコースは減り、柏は大きく蹴り戻す場面が増えた。ボールを運べず、自陣に押し込まれる我慢の展開は、大半のサポーターがイメージする“吉田スタイル”と真逆だった。
大谷主将は「こういう割り切った戦いを達さん(吉田監督)が選ぶことは、僕たちにとって驚きでない」と外野の“思い込み”をたしなめる。相手の出方によって、こちらの採るべきプランも変わってくる。ACLという舞台では、なおさらそのような柔軟性が問われる。そんな当たり前を、意表を突く形で示した、新監督の采配だった。(大島和人)