ヴィッセル神戸
新指揮官を迎えた神戸。準備の成果を披露するとき
始動日以来、神戸はシーズンを戦う体を作ってきた。持久系で体力をつけ、フィジカルメニューで体のキレを整えた。戦術の浸透を図り、練習試合で現在地を探った。練習は常にコンパクトでハード。指揮官は活を入れ、選手たちは素直に向き合う。攻守の切り替えは誰もが速く、球際への出足も秀逸だ。
4日の紅白戦で、今季から指揮を執るネルシーニョ監督は何度もプレーを止めた。選手それぞれのプレーに強い口調で指示を送る。理想と現実のかい離を狭め、ピッチにまとまりを作る作業だ。指揮官は神戸のあらゆる権限を握る。名将は結果責任を一手に背負い、求心力のど真ん中に立つ。すべてはクラブ悲願の“初タイトル”を獲るためだ。
古巣・柏との開幕戦へ、指揮官から思い入れに関する言葉は出なかった。宿る思いを表に吐き出す必要はないのだろう。ここまでに[4-3-3]のシステムでのプレーを最も積み上げてきたが、開幕を1週間後に控え[4-2-3-1]を視野に入れ、4日の紅白戦でも試した。サブ組を柏のシステム[4-1-4-1]にする念の入れようだ。3バックに挑戦したい旨も選手たちに伝え、少しずつだが実戦への準備を進める。情報戦はすでに始まっている。
渡邉は願望を口にする。「勝つ試合を見せて、1年を通して満員の中で試合がしたい」。奥井の胸は高鳴る。「(目標は)タイトル、そこしかない」。紅白戦で主力組を圧倒するサブ組の石津の気合いも上々。「ガツンと決めますよ」。
クラブ創設20周年、阪神・淡路大震災から20年という節目の年。ホームで迎える開幕戦は、熱く高ぶる渾身の90分だ。積み上げた質を、ようやく披露する舞台が訪れた。(小野 慶太)
柏レイソル
4試合目の“開幕”。早期スタートの強みを生かしながら
開幕戦だが、あまり開幕という感じがしない。なぜなら柏は2月17日のプレーオフ(チョンブリ戦/3○2)も含めて、ACLをすでに3試合戦ってきているからだ。
中3日で迎えるこの神戸戦に限らず、柏は今後も短いインターバルで試合が続いていく。しかし「ゲームが多くあるのは自分たちが望んでいたこと。悪い影響はない」と工藤が語るように、選手たちは大よそ前向きだ。若いチーム年齢構成もあり、精神的、身体的な耐性も低くはないだろう。
吉田監督はACL参戦について「いい影響しかないと思う」と断ずる。理由の一つは「試合をしながら反省し、調整するサイクルを、ほかより早くスタートできる」から。4週間の準備で2月中旬に“負けたら終わり”の試合を戦う苦労はあったが、乗り越えたいまとなっては、大きな収穫が残っている。
ボールがダイナミックに動くパスワークは、アカデミーの指導者、ダイレクターとして吉田監督が柏に根付かせてきたモノだ。加えて今季はクリスティアーノ、大津といった“個”も陣容に加わった。「一つになってサッカーをするということ」をポリシーに掲げる新監督だが、それは個を組織に埋もれさせる意味ではない。パスワークに加えて、彼らの仕掛けも、すでに強みとして根付いている。
チーム作りが右肩上がりで進むことはないだろう。監督も「積み上げた時間が多くはないぶん、何かを強調すると何かが失われていくサイクルがまだ続いていく。波が上のほうに出てくるような努力を続けていきたい」と目先の浮き沈みと、その先に築かれる高みを見据えている。とはいえ選手たちはすでに力強い第一歩を踏み出し、連戦にも前向きだ。(大島 和人)