
輪湖がこれまでに挙げた得点は、J2での2得点のみ。ACLの舞台でチームを勝利に導くヒーローとなった
柏をよく知る人ほど「なぜ?」「まさか?」という思いに捉われただろう。そんな輪湖の決勝ゴールだった。
後半のロスタイムを迎え、柏は引き分け狙いの山東魯能を押し込んでいた。とはいえ相手のカウンターには警戒が必要で、バランスを崩して攻めていたわけではない。殊勲の場面について、主将の大谷は「(チームの)オーガナイズ(という点)で言えば間違っている。右のクロスに左サイドバックが合わせるサッカーはしていない」と苦笑する。輪湖のスプリントと“嗅覚”は素晴らしかったが、なぜあのプレーが成功したのかを、柏の常識で説明することは難しい。もっとも大谷は「小さいから相手が気付かなかったんじゃないか」と大真面目な顔で謎を分析していたが…。
ゴール裏のサポーターも、まさか輪湖が決めるとは思わなかったのだろう。ホーム側からは遠く見難かったこともあり、誤って「エキセントリックまさと♪」と工藤のチャントを歌ってしまうほどだった。
輪湖自身は「今日はそんなに走ってなくて、体力が残っていた。体力を残しながら試合が終わるのも悔しい。空いているスペースが見えたので、行かなきゃと思った」と彼を駆り立てたモノを説明する。
ACLを見ると輪湖はどうやら“国際試合向き”だ。左足の質と走力に加えて、コンタクトの強さが特徴で、荒っぽく球際を寄せてくる山東魯能についても「そういった相手が得意」と言い切る。実際に彼は小柄な体でまったくひるまずに応戦していた。縦への突破を完全に封じただけでなく、中に絞って相手を抑え込むカバーリングも見事だった。
輪湖は柏U-18の出身だがトップに昇格できず、高卒後6年間はJ2を転々としてきた非エリート選手。柏に復帰した昨季も、リーグ戦は4試合しか出場していない。ゴールに至っては山東魯能戦がプロ3ゴール目だった。しかし今季はそんな彼が“まさか”のブレイクを見せている。(大島 和人)