エリク・モンバエルツ体制での初勝利はニッパ球で手に入れた。2010年8月に山形に負けて以降、リーグ戦14試合負けなしの“ホーム”である。鳥栖に1-0で勝利し、負けなしの記録を15試合に伸ばした。
ゴールを決めたのは2列目の兵藤だ。前節、FC東京戦で二度のチャンスを決め切れず、ピッチを叩いて悔しさを露わにした。「あそこで決めていれば勝てた試合を自分の責任で逃した」。悔恨の背番号7は、今度こそ決めた。それも「自分らしい」と笑う、実に泥臭いゴールである。下平のシュートを相手DFがブロックした、そのこぼれ球を右足で押し込んだ。
守ってはロングボール対策が奏功し、無失点で試合を終えている。中澤とともに最終ラインで豊田と肉弾戦を繰り広げた栗原は「鳥栖と対戦するのは初めてではない。相手のやり方は分かっている」とニヤリ。早めのロングボールとハイボールに対して、先に触るのはいつもトリコロールの選手だった。また、キャプテンマークを巻いた中澤がコイントスに勝利して風上を選択したことも見逃せない。「鳥栖の良さは前半に点を取って、そのあと守ってのカウンター。ロングボールを押し返せれば鳥栖の良さは減る」と理由を明かす。攻撃も守備も、あらゆるところで勝利への執念を見せた結果が1-0だった。
新監督になってリーグ戦3試合目でようやく初勝利を挙げた。開幕戦は川崎Fに1-3と完敗を喫し、守備が崩壊した。2戦目はFC東京とスコアレスドローに終わったが、被シュート2本と守備の手ごたえを得た。そして3戦目である。娯楽性に富んだ試合とは言い難いが、粘り強さで鳥栖を上回った。試合終了間際には豊田に決定的なヘディングシュートを許したが、これもGK榎本がゴールライン寸前でセーブ。全員が体を張ってゴールを許さなかった。
新スタイルが浸透しつつある一方で、選手たちは辛抱強さを身に付けた。とはいえ守備ブロックを形成する手堅い戦術で、攻撃はビルドアップの精度が低い。新加入のアデミウソンの存在が攻撃を加速させたものの、それでも流れの中から複数ゴールが生まれる気配はない。だからこそセットプレーが重要なのだが、キッカーの中村は負傷離脱中だ。横浜FMは開幕直後なのに苦しい状態で戦っている。
だからこそ、この1勝はとても大きな価値がある。殊勲の榎本は「監督がとても喜んでくれて良かった。チームとしても自信になる」と意味を話す。モンバエルツ監督と横浜FMにとって、これが一歩目だ。(藤井雅彦)