長身で足長のスタイルが、グラウンドでは一際目立つ。ほかのスタッフや選手たちがゆったりとしたジャージーを履いている中、一人スウェット生地の細身のパンツを着こなす。足元のスパイクは流行りのハイテク系ではなく、往年の名選手たちが愛したオールドタイプ。「監督は化学繊維が肌に触れるのが苦手で、スウェットパンツを履いている。スパイクもこだわりがあるようだ」(代表関係者)。フランスからやってきたダンディな指揮官。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、外見から独特のオーラを放っている。
首から下げたホイッスルを吹くと、選手たちが一斉に走って監督の下に集まる。その光景は、まるで統制の取れた軍隊や部活動を連想させる。これまでは広報担当など事務方のスタッフがピッチに入ることは少なかったが、練習時の円陣にも「全員加わるように」という指示が出ている。「とにかく、監督はどんなことでもチーム全体で進めていくという一体感を大切にしている」(吉田麻也)。戦術面だけでなく、彼が大切にしている組織論はこうしたところでも随所に表れている。
そして指導に関しては、選手たちは口をそろえて「監督の指示はかなり細かい」(槙野智章)と明かす。連日非公開練習のため細部までのぞくことはできないが、練習場にはロープが用意され、それを使って守備時における選手間の距離を適正に保つ練習も行われた。「ポジショニングはミリ単位、メートル単位までこだわっている」(宇佐美貴史)。宿舎でのミーティングではW杯やアジア杯の映像を用いて、球際など守備のアプローチの甘さを強く指摘。守備意識の変化が、チュニジア戦でいきなり披露される可能性もある。
「やはり厳しさがある」(長谷部誠)。厳格な知将。エスプリ漂わせる指導者が、いよいよ初陣を迎える。(西川 結城)