その胸に去来するのは、悔しさか、自信か。
宇佐美貴史は結果を出せなかった。89分、香川真司のスルーパスに抜け出して迎えた最後のチャンス。シュートは無情にも右ポストの内側に当たった。
一方、同じ途中出場ながら香川や本田圭佑、岡崎慎司はしっかりゴールに絡んでいる。「すぐに結果を出すところはすごい」。しかし、宇佐美には悔しさと相対する思いも存在していた。「自分だけがプレーに関われていない感じはなかった。技術が優れている選手たち同士であれば、分かり合えるということは分かっていた」。確固たる自信も、少しずつ見え隠れする。
もはやプレーのクオリティーに疑問符が付く選手ではない。ここからは運動量や献身性といった“組織の中での自分”をどう示していけるか。この試合では攻撃から守備に切り替わった瞬間、猛ダッシュで自陣に向けて走り、自分のマークから目を離さなかった。すぐそばのタッチライン際には、指揮官が目を光らせていた。「プレーの切り替えはサイドの選手は監督から口酸っぱく言われている」。足りない部分を自覚する姿を見せることも、アピールにつながる。
G大阪でプレーしているときよりも、より相手の背後や裏のスペースで受けることを意識した。同時に本来のプレーも織り交ぜた。「味方と味方のつなぎ目でボールを受けて、さばいてまた前に出て。ドリブルもアクセントにした」。時間にして20分足らずのプレー。「代表初キャップ。やっぱり楽しかった」。悔しさも自信も感じる中、それが一番の感情だった。
「僕自身はオン(ザ・ボール)で変化を付けられる選手。その中で、どれだけオフ(ザ・ボール)の動きを入れて監督のサッカーに自分の個性や色を近付けていくか、溶かしていけるか。求められることを意識しながら、それだけにならないように。僕はロボットではないので」。
いまは本田や香川を見上げる立場。ただし彼らに到達、いや越えられる潜在能力があると自覚する。「ロボットではない」と言い切る宇佐美。ここから中心選手になっていこうとする気概が込められていた。(西川結城)