奇跡。それは常識では起こりえない不思議な出来事。しかし、この勝利は違う。まぐれや春の珍事でもない。グループとしていつもどおりのことをやり切った金沢の極めて正当な勝利で、その力を証明してみせた。夏場の失速を懸念する声もあるが、プレーオフ争いに絡む可能性も十分にある。
心配なのはクラブの歴史に新たな1ページを刻んだ事実が、ホームタウンにきちんと伝わったかという点だ。現状ではクラブの快進撃に、オフ・ザ・ピッチの面が追随できていない。例えば練習見学に行きたいファンがいたとする。チームスケジュールが、当日に変更になっていてもなお空欄のままであることも珍しくない。このような現状で、自治体や地元からの手厚い支援は期待できない。まずは一人でも多くの人に見てもらう。そのための努力が求められる。なぜなら金沢の組織的かつ献身的なサッカーは、見る者の“心”を動かすことができるからだ。
勝利の余韻冷めやらぬまま取材を終え、スタジアムを後にした。風が吹くとともに、地面に散った桜の花びらがまたひとつと増えていった。この瞬間が最大瞬間風速ではなく、さらなる旋風が巻き起こると期待してやまない。届け、熱量――。大阪の地より、すべての石川県民へ愛を込めて。(野中 拓也)