鳥栖は立ち上がり、山形の3バックのサイドのスペースへ効果的にボールを入れ、押し込む形で主導権を握る。試合前に「自分たちの良さが出し切れていない」と水沼が話していたように、第4節終了時点で最下位のクロス本数に関しても、30分までに3本上げるなど、改善の兆しを見せていた。しかし、主導権を握りながらも、決定的な形は生まれない。
山形が鳥栖の時間帯を乗り切ると、前半終盤から怒涛の反攻を見せる。鳥栖の最終ラインでボールタッチが多くなり始めると見るや、山形の持ち味である前線からのプレスと切り替えの速さを生かしたプレスバックが機能し始める。38分には右からのクロスを起点に石川が決定機を迎えるが、ゴール至近距離からの右足のシュートは鳥栖GK林がセーブ。さらに44分、川西のプレスバックからエリア内に素早い飛び出しで侵入してきた松岡のシュートはポストに嫌われる。スコアレスで折り返したが、決定機は山形のほうが多く、主導権は入れ替わった形になった。
後半に入っても前半終盤からの流れは変わらない。山形はプレスバックからのショートカウンターでリズムをつかむと、鳥栖の陣形にスペースができてきたこともあり、ポゼッションでもリズムをつかむ。だが、決定力を欠く。山形が攻勢に出たことで鳥栖もカウンターに持ち込む機会が増え始め、次第にオープンな展開となる。すると80分、中盤での相手のパスミスを奪った水沼を起点に、最後は吉田のクロスに豊田が頭で合わせる。山形が再三の決定機をモノにできなかった一方で、豊田という“絶対的な個”がワンチャンスで仕留めてみせた。
試合のリズムをつかみ、幾多の決定機を生みながらゴール前での個の質というJ1の壁を味わうことになった山形にとっては悔やまれる敗戦。一方の鳥栖は試合内容に課題を残しつつも、リーグ戦での連敗を『2』で止め、公式戦5試合ぶりの勝利をつかんだ。(杉山 文宣)