出番に恵まれなかったベテランが、ようやくスポットライトを浴びた──。
この試合、チームが選ぶマン・オブ・ザ・マッチに選出されたのは得点を決めたアダイウトン、ジェイではなく、プロ14年目の坪内。体を張ったディフェンスで完封勝利に貢献し、人生初というお立ち台で「失点ゼロで終えることができて良かった」と喜びを爆発させた。
第8節にしてつかんだ今季初の先発。今季の出場は試合終了間際に投入された第4節・大分戦(2○1)のみだった。その大分戦では守備固めで起用されるもエヴァンドロに“あわや”という場面を作られ、名波監督を激怒させた。そのワンプレーが脳裏に焼きついて離れなかった。「『なんのためにあの場面で出たのか』という思いがずっとあったし、あのミスを取り返すためにも、という思いだった」(坪内)。
天然キャラであり、チーム屈指のムードメーカー。試合前日のリラックスゲームでもコミカルな動きで選手・スタッフを爆笑させていた。ベンチに座り続ける歯がゆさは、表には出さない。前所属の新潟では定位置を奪えず、昨季途中に磐田へ加入。後半戦で一度はポジションをつかんだが、第37節・熊本戦で左膝窩筋損傷という大けがを負い、そのままシーズンを終えた。今季始動日は伊野波、藤田、森下に次ぐ4番手として迎えている。前節・岡山戦(1△1)でも出番はなかったが、気持ちを切らすことはなく、練習場へ戻ると黙々と走り込んだ。「練習態度、人間性、150点満点です」とは名波監督の弁である。
今年5月で32歳になる、2児のパパ。「プロサッカー選手としての生活を少しでも長く続けたい。子供たちはどう思っているか分からないけど、少しでも自分のプレーを見せたいという思いがある」。キックオフ直前、スタンドで見守る家族に手を振り、自らを奮い立たせた。日本代表経験もある伊野波を負傷で欠く一戦だったが、「誰が抜けても困らないようにチーム作りをしてきた」と名波監督。指揮官の言葉を、一度は“ミス”を犯したベテランCBが、自らのプレーで証明してみせた。(南間 健治)