
鹿島は小笠原らの投入がハマリ逆転に成功した
トニーニョ・セレーゾ監督が率いた試合の中で、これほど鮮やかな交代策はなかったかもしれない。明治安田J1・1st第5節の新潟戦(1△1)で豊川を呼び寄せながら、実際に切ったのは青木だったように、どこか突き抜けられないのがセレーゾ采配の典型。決してベンチワークは得意ではない。しかし、勝たなければいけない状況が、選手だけでなく監督からも迷いを拭い去る。打った交代策はどれも的を射たモノだった。
選手に出した指示も思わず手を打ちたくなる。強風下の状況に加え、相手CBは高身長。そこに高崎をぶつけることはセオリーに反するが、「相手のCBに疲労が来ている。高さで勝負し、センタリングでニアに入るつぶれ役をしてくれ」と指示。肉弾戦でさらに相手を疲弊させる作戦に出た。
そのために必要な中盤の支配力を小笠原によって強化。試合後、監督が「中盤のタメができたし、そこからチームも落ち着きを取り戻した」と振り返ったとおり、セカンドボールを拾えるようになり、ビルドアップもスムーズになった。
土居のゴールで同点に追い付くと本山を入れてさらに相手CBを追い詰める。スルーパスを防ぐために散々走らされた巨漢CBが、決勝点の場面では二つに割れ、金崎が走り込むスペースを明け渡したのは偶然ではなかった。
ベンチにいたのがサッカーをよく知る二人の大ベテランだったこともセレーゾ監督に味方した。本山は小笠原と試合を見ながら「入るときに細かく近くでつないでいくことを心がけてやろう」と話していたという。試合の機微を感じ取れる二人が、セレーゾ采配をさらに効果的にしたのは確かだろう。ともに3月18日以来の出場となる二人を豪州まで帯同させたのは監督の判断だ。試合前日、「自分たちはしっかり準備をしてきた自信も持っている」と話していたセレーゾ監督。やるべきことをやったのは選手だけではなかった。(田中 滋)