緩急ではなく急急。持てる者だけの特権
浅野拓磨は誰の目にも明らかな武器を持っている。一歩、二歩で相手をぶっちぎるスピードは、国内を見渡しても傑出した速さだ。緩急を必要とせず“急”だけで相手守備網に風穴を開け、ゴールまでの最短距離を走って一人でカウンターをやり切れる。浅野は持てる者だけの特権を有しているアタッカーだ。
だからこそ、森保一監督はまだJリーグ通算2得点のストライカーがヴァイッド・ハリルホジッチ監督の目に留まったことを驚いてはいなかった。「あのスピードを目の当たりにしたら直接見たくなるでしょう」。浅野のスピードはどんな指揮官にも魅力的に映るに違いない。
もっとも、浅野は今季に入っていきなり速くなったわけではない。今季からグラウンドの上でスピードを効果的に体現できるようになってきたのだ。プロ入り3年目。ここまで到達するのに少なくない時間を要したが、指揮官の胆力と本人の努力によってブレイクスルーは訪れた。
「大胆にいつもゴールを狙っていけば必ず点が取れる」と森保監督は浅野の能力に制限をかけず忍耐強く見守り、「監督には練習中から自信を持ってやれとしか言われてない」という浅野は、「がむしゃらに前だけ向いてやれば何かが生まれる」と信じてピッチを走り続けた。そして、第6節・FC東京戦でゴールを奪ってブレイクスルーの時を迎えた浅野は、自信を付けてスピードにより磨きをかけている。
「自信を持つことで結果を出せるようになり、また次の結果を出すことで自信を付けている」。森保監督も微笑む好循環の中にいる浅野にとって、今回の代表候補合宿はさらなる加速のキッカケになりそうだ。(寺田 弘幸)
FW 浅野拓磨(広島)
1994年11月10日生まれ、20歳。三重県出身。ペルナSC→八風中→四日市中央工高を経て2013年に広島加入。J1通算21試合出場2得点。J3通算2試合出場0得点。