首位浮上の好機だから、だけではない。マッシモ・フィッカデンティ監督は心底、この試合に勝ちたい。
昨季のJ1第21節。両者は味スタで壮絶な撃ち合いを演じ、4-4で痛み分けた。ただしFC東京にとっては結果以上に痛恨の事実があった。ストライカー・平山を負傷で失ってしまったことだ。
指揮官はそのことへの怒りが当分収まることはなかった。受傷した場面で浦和の選手が見せたプレーは、客観的に見ても悪質なファウルだった。さらに武藤、河野とともに前線で好連係を見せていた平山が長期の戦線離脱となったことは大きな誤算だった。浦和戦の翌週以降のミーティングで「ソウタ(平山)のためにも戦わないといけない!」と何度も選手たちに活を入れていたことからも、悔恨の思いはうかがえた。
その平山が、13日の練習試合(対法政大)で昨季の浦和戦以来約9カ月ぶりに実戦復帰を果たした。練習でも徐々に動きに軽快さが戻っており、今節ベンチ入りする可能性もあるだろう。指揮官の秘めたる熱い思いを、彼の復帰とともにこの首位攻防戦でぶつけてくるかもしれない。
フィッカデンティ監督からはさらに、日本サッカーの概念やビッグクラブといった大勢に挑む姿勢も見え隠れする。1st第9節・川崎F戦の前日、自らその思いを語り出した。
「CLの準々決勝でアトレチコ・マドリーが今季初めてレアル・マドリーに負けたことで、シメオネ監督のサッカー(堅守速攻)が新聞紙上で批判されていた。しかし、彼らはレアルの数分の一の強化費で立ち向かっている。日本では浦和やG大阪がビッグクラブである。とはいえ、どの国でも優勝するクラブは失点が10、20点台しかしない。とにかく毎試合無失点を目指す。それが勝つために必要なこと。4-0、5-0というスコアはバスケットボールのようなもの。だからこそ堅いチームとして戦う。いま、ウチの選手たちは“結果”を重要視している。それこそが最も正しい考え方。だから、シメオネの考えが批判されることはあり得ない」
なぜ、自らこう話したのかと問うと、監督は「とにかく私は、“勝ちたいから”」とシンプルに返ってきた。そしてその翌日、日本を代表する攻撃的なチームである川崎FをFC東京は2-1の逆転で下した。この浦和戦、リアリストに率いられし集団は再び目の前の壁を打ち破ることができるか。イタリア人指揮官にとって、挑戦である。(西川 結城)