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高まるスペイン現地での評価
2試合連続ゴールを挙げた乾が、スペインでも大注目されている。巻きながらファーサイドのサイドネットを揺らしたリーガ初ゴールは「ゴラッソ」と表現され、PKを誘った鋭い切り返しは「恐ろしい切れ味」と形容され、翌週の2ゴール目も「ゴラッソ」と呼ばれたほか、「左右のキックともに素晴らしい」などと称賛された。確かに10日のエスパニョール戦は今季最高の出来だったが、18日のグラナダ戦は前半のゴール以外の見せ場は皆無だった。それでも、絶賛状態なのはメディアの見る目が変わったからだ。
以前はゴールやアシスト、ドリブル突破などの「成果」が評価されていたのが、いまはプレーの「意図」も評価されるようになった。結果的に通らなかったパスであっても「もし通っていたら絶好機に」と好意的に解釈されている。ゴールに象徴される乾の技術の高さが知れ渡ったことで“何かをやってくれる選手”という期待感が、スペイン人の側に高まっている証拠なのだ。やはりFWはゴールを決めてなんぼ、である。ミスパスや失敗したドリブルの意図を汲んでもらって拍手されるような地位を勝ち取ったことは、今後の乾に強い追い風になるだろう。“挫折続きの日本人選手”という逆風からの脱出である。
監督が与える最適な役割
[4-4-2]の左サイドの定位置争いでもライバルのサウール・ベルホンを一歩リードした感がある。ベルホンがコパ・デルレイで重点起用(7日、13日のラス・パルマスとの2試合ではベルホンが135分出場、乾が45分出場)されたせいもあって、リーガではここ3試合連続先発。今週末のアスレティック・ビルバオ戦は本来ならベルホンが先発する番だが、2試合連続ゴールのツキを買われた乾がスターティングメンバーに名を連ねる可能性は小さくない。
これはゴールを決めた2試合だけでなくシーズンを通して言えることだが、乾はメンディリバル監督が求めるピースとしてぴったりはまっている。エイバルの左サイドに求められるのは、繊細なタッチや正確なキックによるフィニッシュワーク。ケコとカパの馬力とスピードにあふれた右サイドが打開した状況に、左の乾がアシストかシュートでクオリティーをプラスする。乾はケコほどエネルギッシュに動けないが、ケコは例えば乾の初ゴールのようなシュートは打てないだろう。攻撃においてエイバルは左右対称のチームではなく、右が「運動量での貢献」、左が「技術での貢献」という組み合わせになっている。
メンディリバル監督は、乾のボールさばきの巧みさ、キックの正確さ、リズムチェンジによる鋭いドリブルと切り返しという長所と、フィジカルコンタクトの弱さ、プレスは忠実でもボール回復力のなさ、波のあるプレーぶりという短所を熟知している。だからこそ、彼を密集に置かずにサイドに張らせ、セットプレーのキッカーとし、相手ボールのセットプレーでは最前線に残し、ロングボールのターゲットにしない、という約束事の中でプレーさせている。
現在エイバルが6位と大健闘しているのも「誰が出ても機能する」と言われるほど戦術が浸透しているから。乾の大活躍は、監督とチームメートが彼の特徴を完璧に把握し、最適な役割を与えているからに他ならない。( 木村 浩嗣)