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[鹿島]欧州王者に全身全霊でぶつけた鹿島流「自分たちのサッカー」/クラブW杯決勝 レアル・マドリー×鹿島

2016/12/21 6:00


Photo: Getty Images
 鹿島が散った。魂を揺さぶる闘志と、鮮やかなゴール。鮮烈なイメージを残して鹿島が散った。
 勝機はあった。
 チャンピオンシップを前にして一致団結したチームは、レギュラーシーズンから生まれ変わっていた。試合に出る、出ないに関係なく、選手、監督、スタッフ全員が同じ方向を向いて戦う。そこにサポーターが加わった力の大きさは、レアル・マドリーとの個の能力の差を埋めてしまうと思われた。
「このチームならどこまでもいける」
 クリスティアーノ・ロナウドが大好きで、レアル・マドリーの試合をよく見ている鈴木が、そう言えるほど、チームは最高の状態にあった。
 加えて開催地は日本だった。いくらレアル・マドリーが日本で人気のあるクラブでも、1点取ればスタジアムの雰囲気は変えられる。誰も鹿島が勝つと考えていないからこそ、1点だけでもインパクトを与えられるはずだった。選手たちも虎視眈々とそのチャンスを狙っていた。 それが2点も入ったのだ。柴崎の1点目にもスタジアムはどよめいたが、2点目で完全に潮目は変わった。鹿島を後押しする雰囲気がスタジアム全体を包んでいた。
 それでも鹿島は散った。盛大に、大輪の花を咲かせることはできなかった。
 2失点したあとのレアル・マドリーは強かった。ドリブル突破に失敗しても笑っていたC.ロナウドは額に血管を浮き上がらせる。コートに手を突っ込むジダンがコーチングエリアを飛び出し、鹿島のベンチ前まで来て激しく指示を送った。本気になったあとに見せたものはすべてが違った。
 試合後すぐ、柴崎は「差はあった」と話した。
「パス1本1本が重いですし、味方にとって受けやすいパスを出しているなという印象はありましたし、ポジショニングも非常に細かくよく取れているなと思いました。非常にディフェンスのしづらい攻撃でした」
 確かに差はあった。しかし、あと一歩まで追い詰めた。個人の能力に差があったとしても、チームを最高の状態まで高められれば、世界とも互角に戦える。
 試合前日の記者会見で柴崎は次のように話していた。
「これが日本人なんだというプレーもそうですけど、これが日本という国の鹿島アントラーズというクラブのフットボールなんだ、というものを見せたい」
 大会期間中、石井監督をはじめとして、鹿島の選手たちは「自分たちのサッカー」という言葉を何度も使っていたが、要するに柴崎が言うものと同じだろう。W杯ブラジル大会で一人歩きしてしまった漠然とした言葉が、この大会では確かな像を結んでいた。
 それは、選手や監督だけでなく、鹿島を見続けてきたサポーターはもちろんのこと、大会期間中に鹿島の試合を見た誰もが同じサッカーを思い浮かべられる。それほど強いメッセージ性を備えていた。
 今年、クラブ創設25周年を迎えた鹿島は、ずっと同じスタイルを貫いてきた。クラブW杯決勝は、その歴史のすべてが結実した試合と言えるだろう。ジーコやレオナルドといった歴代OBが、海の向こうからすぐさま健闘を称えるメッセージを送ったのも、試合を見れば彼らが残したものが息づいていることを感じられるからだ。
 この大会で鹿島が戦った4試合はどれも紙一重の勝利だった。オークランド・シティーには久しぶりの海外クラブとの試合にペースをつかめず、マメロディ・サンダウンズには攻撃をまともに受けてしまい、アトレチコ・ナシオナルにも圧倒された。それでも勝ち切ったことで、ほかのJクラブとは比べ物にならない経験値を得た。だが、大事なのはこれからの戦いだ。
 刺激を受けたJのライバルは手ぐすねを引いて待っているだろう。鹿島にできるなら、と闘志に火が付いているに違いない。
 花は散ったが、そのイメージは多くの人にくっきり刻み込まれた。「鹿島としては、この試合を経て、どういうクラブにしていくのか、なっていくのかが重要だと思う。むしろ大変なのはこれからだと思います」
 最後に柴崎の言葉が耳に残った。(田中 滋)

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