試合終了の笛が鳴り響くと、磐田の選手とサポーターは喜びを爆発させた。ピッチの各所で激しい肉弾戦を繰り広げ、微妙な判定に集中を乱されながらも、ホームチームは力強く勝利をつかんでみせた。
試合1時間30分前に差し替えられたメンバー表には、中村俊の名前がなかった。体調不良のためベンチ外となったのだ。川辺を一列前に上げ、上田を先発に起用し、キックオフを迎えた。急な事態で先発が変更となったが、イレブンは持てる力を存分に発揮した。
主導権を握りながら後半早々にルーカス・ポドルスキに決められ、相手の士気が一気に高まった。そうした状況でも、磐田は冷静さを失うことなくゴールを目指した。同点弾は流れるようなショートカウンターからで、きっかけは上田のスライディングだ。左足のキックによるゲームメークが大きな武器で、激しいプレーは決して得意ではなく「課題」(上田)だった。しかし、この日の背番号7は常にハードワークし相手に挑んでいる。それが実を結び、川又の今季10点目につながった。
79分のFKで、ボールの前に立ったのは松浦。中村俊は不在で、上田もすでにベンチに退いていた。キッカーを託された松浦が右足を振ると、ボールは壁の上を超えてゴールの右スミに吸い込まれていった。「『とりあえずリラックスして蹴れ』と言われた。練習でもたまに蹴らせてもらっていたし、たまに入ったりもしていたので、決まって良かった」。
試合後、小柄なアタッカーは照れたような表情で語った。中村俊を欠いた磐田は、チーム一丸となって神戸を叩いたのだった。(青木 務)