早稲田大在学時からFC東京でプレーし、長年にわたって青赤を貫いた。最後の試合となったホーム最終戦。徳永悠平はキャプテンマークを巻いて戦った。
いなくなると分かって、あらためて気づいた。これほど安定した守備ができる日本人選手は、はたしてどれほどいるのだろうか。この試合も、G大阪の攻撃に慌てることなく対応。背後を狙われれば敵と並走しては止め、シンプルな相手のパスはしっかりとはね返す。もちろん要所ではガッツリFWをつぶすようなハードディフェンスも。今季、FC東京の守備陣は4バックから3バックに移行する中、不整備な組織を突かれることが多かった。ただ、その中でも徳永だけは、個人のパフォーマンスを落とすことはなかった。安定感。それは守備の人間として、実は稀有な力である。
最後の挨拶。そこでもあくまで飄々とした表情は普段と変わらず、涙もなかった。「最初は挨拶の言葉を考えていたけど、真っ白になったらダメなので手紙にするかも」。数日前にそう話していたが、案の定、試合当日のセレモニーで「手紙にまとめてきました」の一言。その瞬間、しんみりムードの味の素スタジアムは笑いに包まれた。徳永らしさ満載の空気だった。
「リーグ戦でタイトルを獲れなかったことが心残りです。ただ、故郷の長崎のサッカー界を活性化させたい。まだ体が動くこのタイミングで移籍したかった。その気持を理解してくれたクラブに感謝しています」
隣で同じくFC東京最後の瞬間を迎えた石川直宏は、これで引退する。しかし、徳永の選手人生はまだ終わらない。「本当にこのチームしか知らないので、環境が変わるのは楽しみだけど、やっぱりさびしい。もちろん、今までの思い出がよみがえってきた。でも同時に、来季からまた戦いが始まる。次のステージでも頑張るだけ。まだまだ自分のサッカーは続く」
必要以上に浪花節もない。シンプルに、「FC東京に本当に感謝しています」の一言。それが、誰よりも平静でいて強じんなプレーをする、徳永らしい思いの伝え方だった。(文・西川 結城)