Feature 特集

[PLAYBACK 2019]伝統×革新

2020/6/12 10:21


19年7月に鹿島の経営権を取得したフリーマーケットアプリ大手『メルカリ』。
就任直後に小泉文明新社長が語った意気込み、
「伝統と歴史を非常に大事にしつつ、テクノロジーを使った改革でさらに価値を上げたい」。
コロナ禍の現在、鹿島のスピーディーな実行力が脚光を浴びている。
文・田中 滋

際立つスピード。先手、先手の施策

コロナ禍で際立つ存在感

 新型コロナウイルスの影響によりJリーグが中断して以降、鹿島の存在感が際立っている。3月21日に札幌との練習試合をDAZNで生中継したことを手始めに、5月16日には「Jリーグの日」に合わせ、Jリーグ公式YouTubeとNHK BS-1で配信・放送された過去試合にあわせて、株式会社ookamiが提供するスポーツエンターテイメントアプリ「Player!」を使用して投げ銭企画をいち早く実現させた。
 なぜ、鹿島は先手、先手の施策が打てるのかといえば、昨年7月末に経営権を取得したメルカリの存在があるからだ。以前の体制のままであれば、こうしたすばやい施策を矢継ぎ早に実行に移すのは難しかったかもしれない。
 もともと経営権が移行する前から、クラブは多くの優秀な人材を集めていた。しかし、その能力を十分に発揮できているとは感じておらず、鈴木秀樹取締役は当時スポンサーだったメルカリの小泉文明社長に、社員の能力を生かせる人事制度について、相談を持ちかけていたという。そこで構築された信頼関係がいま花開いている。
 実際に日本有数のIT企業に成長したメルカリのノウハウは惜しみなく鹿島に注がれている。新社長に就任した小泉氏が「紙の多さに驚いた」というように最先端のIT企業からすれば日本で最もタイトルを獲得してきたクラブで行われる業務の進め方はあまりにもムダが多く見えたことだろう。目に見える施策を支えるための裏側の変化は、すでに多くの部分で起きている。
 社内で利用するファイルはGoogleが提供するビジネスツールである『GSuite』で管理され、選手たちにもGoogleドライブでダイジェスト映像がいつでも見られるように用意されている。また、全社に『Slack』が導入され、情報共有もスムーズでスピーディに。DAZNの中継が2日で決まったのもSlack導入があったからこそだろう。
 その他にもテクノロジーの導入は枚挙に暇がない。rakumo、Sansan、ACALL、SmartHR、ZendeskとIT企業さながらのデジタルトランスフォーメーション施策が打たれ、6月1日からは電子著名サービスが導入された。これにより契約書類を中心にデジタル化が進み、判子による決済が何度も必要だった前体制から1年足らずでの大変革となった。
 その中心にいる小泉社長は「チャレンジすることが大事なフェーズ。空振りもあると思うので、温かく見守ってほしい」と攻めの姿勢を打ち出す。
 5月1日にはカシマウェルネスプラザのインストラクターによるオンラインプログラム“アントラーズコネキタール”を開始。これまでに小泉慶と上田綺世が出演し、参加者とともにパーソナルトレーニングを体験した。また同12日には音声プラットフォームアプリ「stand.fm」を利用してクラブ公式番組の配信をスタート。初回放送には内田篤人が登場し、チームメイトを一言でバッサリ斬るという企画でサポーターを楽しませた。
 
テクノロジーが突破口
 
 先述した二つの施策に比べれば、サッカー界に大きなインパクトを残すものではないかもしれない。しかし、コロナ禍に見舞われる状況において、いまあるテクノロジーを活用することは現状打破の突破口となるかもしれない。
「伝統と歴史を非常に大事にしつつ、テクノロジーを使った改革でさらに価値を上げたい」。
 就任直後の小泉社長の言葉は、さらに先を見据えていたはずだ。今後の改革が楽しみだ。

EG 番記者取材速報

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