奈良クラブの勝因としては出場選手全員のハードワークが大きいが、その選手たちの中でも特に気合いが入っていた二人がいる。対戦前から話題沸騰のシュナイダー潤之介と岡山一成だ。
シュナイダーは2007年に仙台に加入。勝利後のパフォーマンスは“シュナイダー劇場”と呼ばれた。仙台在籍時に彼が「柏で岡山がやっていたようなサポーターと一緒になった盛り上がりを、仙台でも実現したいと思っていた。そうしたら、半年後に“本家”の岡山が仙台にやってきた」と笑いながら話していたように、同年途中から岡山が仙台に加入してその“劇場”に加わった。
二人とも08年をもって仙台から離れることとなった。「仙台サポーターは苦しいときも声援を送ってくれた」(岡山)、「僕もオカ(岡山)も、憎しみを持って仙台を離れたのではない。仙台はずっと好きなチーム」(シュナイダー)と、奈良で再びチームメートとなってからも、仙台を気に掛けていた。
そして今回の天皇杯で組み合わせを知ると、仙台との対戦に向けて士気は高まった。「シュナ(シュナイダー)はここ2週間テンションが上がりっぱなし。オカは水曜日に熱射病気味だったが、コンディションを整えてくれた」(中村敦監督)。1回戦でJ3の福島を倒し仙台との挑戦権を手にすると、それからの一週間で両者はクラブ公式SNSを駆使してメッセージを送り、試合当日も気合いの入ったパフォーマンスを披露。
「(途中投入予定の)岡山を信じて0-1で耐えた」とシュナイダーが守れば、切り札の岡山が「サッカー人生で一番のゴール」をカウンターから決めた。シュナイダーは反対側のゴールまで猛ダッシュして岡山を祝福した。
試合後、仙台側のゴール裏からも、挨拶に行った両選手を含む奈良の選手たちにコールが贈られた。その後も奈良側での盛り上がりは続く。シュナイダーと岡山のリードする“奈良劇場”の仙台出張公演は、大盛況だった。(板垣 晴朗)